医療過誤訴訟における損害賠償請求,過誤,賠償
Claims, Errors, and Compensation Payments in Medical Malpractice Litigation
D.M. Studdert and Others
民事訴訟制度改革に関する現在の論争では,医療過誤システムの批判者らは,被害や標準以下の治療,またはその両方について,証拠の不十分な損害賠償請求をするという取るに足らない訴訟が多く,費用がかかると非難している.
訓練を受けた医師が,損害保険会社 5 社から無作為標本として提供された,判決済みの過誤の賠償請求 1,452 件を再調査し,医療被害が発生したのかどうか,そして発生していた場合,それが医療過誤によるものかどうかを検討した.過誤の証拠が不十分な賠償請求の発生率,特徴,訴訟の結果,費用を解析した.
賠償請求の 3%では立証可能な医療被害が存在せず,37%では過誤がなかった.過誤(515 例中 370 例 [72%])あるいは被害(37 例中 31 例 [84%])に関連しない賠償請求の大半では賠償は行われず,過誤による被害に関する賠償請求の大半では賠償が行われていた(889 例中 653 例 [73%]).過誤が関与しない賠償請求に対する支払いの頻度は,逆の間違ったケース,すなわち過誤に関連した請求への不払いよりも頻度が低かった.過誤が関与しない賠償請求に対し賠償が行われた場合,賠償額は過誤が関与する賠償請求への賠償額よりも平均して有意に低かった(313,205 ドル 対 521,560 ドル,P=0.004).全体として,過誤が関与しない賠償請求は,本制度の総費用の 13~16%を占めた.賠償金 1 ドル当り,54 セントが運営費(弁護士,専門家,裁判所への支払いを含む)に費やされた.過誤に関連する賠償請求は総運営費の 78%を占めた.
過誤の証拠に欠ける賠償請求は少なくないが,大半では賠償が容認されていない.支出の大部分は,過誤に関する訴訟とその支払いに向けられている.医療過誤訴訟にかかる諸経費は法外な額である.