急性肺塞栓症に対するマルチスライス CT
Multidetector Computed Tomography for Acute Pulmonary Embolism
P.D. Stein and Others
急性肺塞栓症の診断におけるマルチスライス CT 血管造影(CTA)の精度について,最終的な結論は出ていない.
肺塞栓症診断前向き検討 II 試験(Prospective Investigation of Pulmonary Embolism Diagnosis II trial)は,急性肺塞栓症の診断におけるマルチスライス CTA の精度を,単独使用と静脈相の画像検査との併用(CTA-CTV)で検討する前向き多施設共同研究である.複数の基準検査を用いて,肺塞栓症の診断を確定あるいは除外した.
基準検査による診断を受け,CT 検査を終了した患者 824 例のうち,51 例では画像の質がわるく,CTA では確定診断にはいたらなかった.このような確定的でなかった検査を除外すると,CTA の感度は 83%,特異度は 96%であった.臨床評価による確率と一致する場合,確率が高い場合の陽性適中率は 96%,低い場合の陰性適中率は 96%であり,臨床評価による確率が中間の場合の適中率は 92%であった.臨床評価による確率と一致しない場合は診断にいたらなかった.CTA-CTV では,824 例中 87 例では CTA または CTV いずれかの画質がわるく,確定診断にはいたらなかった.肺塞栓症に対する CTA-CTV の感度は 90%,特異度は 95%であった.CTA-CTV でも,臨床評価による確率と一致しない場合には診断にいたらなかった.
肺塞栓症の疑いのある患者では,マルチスライス CTA-CTV は,CTA 単独よりも診断に対する感度が高く,特異度は CTA 単独と同等である.CTA と CTA-CTV は,臨床評価と一致している場合にはいずれも適中率が高いが,臨床評価による確率が画像結果と一致しない場合には追加検査が必要である.