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June 15, 2006 Vol. 354 No. 24

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急性肺損傷における 2 種類の体液管理法の比較
Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury

The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network

背景

急性肺損傷患者の最適な体液管理法は不明である.利尿や水分制限は肺機能を改善する可能性があるが,肺以外の臓器の灌流を低下させる可能性もある.

方 法

急性肺損傷患者 1,000 例を対象に,7 日間の詳細なプロトコールに従って,保守的な体液管理法(利尿と水分制限)と進歩的な体液管理法(大量輸液)を比較する無作為化試験を行った.主要エンドポイントは 60 日の時点での死亡とした.副次的エンドポイントは,人工呼吸器を使用しなかった日数,臓器不全が起らなかった日数,肺の生理機能の測定値などとした.

結 果

60 日の時点での死亡率は,保守的方法群では 25.5%,進歩的方法群では 28.4%であった(P=0.30,差の 95%信頼区間 -2.6~8.4%).最初の 7 日間の累積体液バランスの平均値(±SE)は,保守的方法群では -136±491 mL,進歩的方法群では 6,992±502 mL であった(P<0.001).進歩的方法に比べ,保守的方法では,最初の 28 日間における酸素飽和度([平均気道内圧×吸気酸素分画の動脈酸素分圧に対する比率]×100)と肺損傷スコアが改善し,人工呼吸器を使用しなかった日数(14.6±0.5 対 12.1±0.5,P<0.001)と集中治療室に入室しなかった日数(13.4±0.4 対 11.2±0.4,P<0.001)が増加した.一方,試験期間中のショックの発生率と有病率,および最初の 60 日間の透析の使用(10% 対 14%,P=0.06)は増加しなかった.

結 論

主要転帰である 60 日の時点での死亡率に有意差は認められなかったが,保守的な体液管理法によって,肺以外の臓器不全の発生を増加させることなく,肺機能が改善し,人工換気と集中治療の期間が短縮した.これらの結果は,急性肺損傷患者における保守的な体液管理法の使用を支持するものである.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00281268)

本論文は,2006 年 5 月 21 日 www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 354 : 2564 - 75. )