心房細動におけるコネキシン 40 遺伝子(GJA5)の体細胞変異
Somatic Mutations in the Connexin 40 Gene (GJA5) in Atrial Fibrillation
M.H. Gollob and Others
心房細動は不整脈の中でもっとも頻度が高く,心血管疾患,とくに脳卒中の主な原因である.心臓のギャップ結合蛋白であるコネキシン 40 は,心房筋細胞で選択的に発現しており,心房の電気活動の調整に関与している.われわれは,特発性心房細動には遺伝的基盤があり,コネキシン 40 をコードする遺伝子 GJA5 の組織特異的変異により,心房細動を発症しやすくなる可能性があるという仮説を立てた.
特発性心房細動患者 15 例から採取した心臓の切除組織および末梢血リンパ球から,ゲノム DNA を単離し,GJA5 配列を決定した.同定した GJA5 変異をギャップ結合欠損細胞株に形質導入し,蛋白輸送および細胞間の電気的結合に与える機能的影響を評価した.
患者 15 例中 4 例で,4 つの新規ヘテロ接合ミスセンス変異が同定された.3 例では,心臓組織標本で変異が認められたものの,リンパ球では認められなかったことから,遺伝的欠陥が体細胞に由来することが示された.4 例目の患者では,配列変異が心臓組織とリンパ球の双方で検出され,生殖細胞系列に由来することが示唆された.変異蛋白の発現解析から,細胞内輸送障害あるいは細胞間の電気的結合の低下が明らかとなった.
GJA5 の変異により,ギャップ結合の形成あるいは電気的結合が障害され,特発性心房細動を発症しやすくなる可能性がある.われわれのデータは,従来は特発性と考えられていた頻度の高い疾患が,遺伝的基盤をもち,患部組織に限局した変異が関係している可能性を示唆している.