September 14, 2006 Vol. 355 No. 11
資源の不十分な状況における HIV 治療の費用対効果 ― コートジボアールの事例
Cost-Effectiveness of HIV Treatment in Resource-Poor Settings ― The Case of Cote d'Ivoire
S.J. Goldie and Others
資源の乏しい状況において抗レトロウイルス療法の実施が次第に増加しているため,治療時期と治療決定の指針となる診断検査の使用について,重要な問題を解決しなければならない.
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したコートジボアールの成人コホート(平均年齢 33 歳,CD4 細胞数 331 個/mm3,HIV RNA レベル 5.3 log コピー/mL)において,治療内容の費用対効果を評価した.疾患進行の予測因子として CD4 細胞数と HIV RNA 量を組み込んだコンピュータシミュレーションモデルを使用し,未治療,トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST 合剤)の予防投与単独,抗レトロウイルス療法単独,ST 合剤の予防投与と抗レトロウイルス療法の併用の 4 つの状況に関連する,長期的な臨床成績と経済的な結果を比較した.
調整前の平均余命は,ST 合剤予防投与単独と比較して,臨床基準に基づいて開始された抗レトロウイルス療法+ST 合剤予防投与では 10.7 ヵ月,CD4 検査と臨床基準に基づいて開始された抗レトロウイルス療法+ST 合剤予防投与では 45.9 ヵ月と幅があった.各治療法を,それに次いで費用の低い治療法と比較した場合の延命 1 年当りの増分費用は,ST 合剤予防投与単独では 240 ドル(2002 年の US ドル価),CD4 検査を実施しなかった場合の抗レトロウイルス療法+ST 合剤予防投与では 620 ドル,CD4 検査を実施した場合の抗レトロウイルス療法+ST 合剤予防投与では 1,180 ドルであった.抗レトロウイルス療法を単独で行った治療法は,いずれも ST 合剤の予防投与を併用した治療法ほど費用対効果は高くなかった.第一選択レジメンの失敗後に第二選択抗レトロウイルス療法を行うことで,余命が 30%延長した.
ST 合剤の予防投与と抗レトロウイルス療法の併用は,臨床基準を,治療時期の指針として単独または CD4 検査と組み合せて使用することで,資源が乏しい状況では経済的に魅力的な保健衛生への投資となる.