September 21, 2006 Vol. 355 No. 12
心筋梗塞後の前駆細胞の冠動脈内注入
Transcoronary Transplantation of Progenitor Cells after Myocardial Infarction
B. Assmus and Others
予備的研究から,急性心筋梗塞後に骨髄由来前駆細胞(BMC)または血中前駆細胞(CPC)を冠動脈内に注入することで,左室機能が改善する可能性があることが示唆されている.心筋梗塞が治癒した患者に対する細胞移植の効果は不明である.
患者 17 例を対象にした初回予備的試験後,クロスオーバー対照試験を行った.試験前 3 ヵ月以内に心筋梗塞を発症し,安定した虚血性心疾患を有する患者 75 例を,細胞移植を行わない群(23 例),または CPC(24 例),BMC(28 例)のいずれかを移植する群に無作為に割り付けた.CPC と BMC の移植は,壁運動異常がもっとも著しい左室領域へ血液を供給する開存冠動脈へ行った.3 ヵ月後の追跡調査時に,対照群の患者を CPC または BMC の移植に無作為に割り付け,最初に BMC または CPC を移植した患者は,それぞれ BMC から CPC へ,CPC から BMC へ切り替えた.
左室駆出率の絶対変化は,BMC 移植群(+2.9 パーセントポイント)において,CPC 移植群(-0.4 パーセントポイント,P=0.003)および非移植群(-1.2 パーセントポイント,P<0.001)よりも有意に大きかった.全体的な心機能の改善は,BMC の冠動脈内注入の標的とした領域で,局所収縮性が明らかに増進したことに関連していた.試験のクロスオーバー期間に,BMC の冠動脈内注入により,全体的および局所的な左室機能が有意に改善することが明らかになった.こうした改善は,BMC 移植群への切り替えが,対照群,CPC 群のいずれから行われたかには関係しなかった.
前駆細胞の冠動脈内注入は,心筋梗塞が治癒した患者に対する,安全かつ実施可能な方法である.BMC の移植は,3 ヵ月後の左室駆出率に中等度ではあるが有意な改善をもたらす.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00289822)