The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

November 16, 2006 Vol. 355 No. 20

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

低ナトリウム血症に対する経口選択的バソプレシン V2 受容体拮抗薬トルバプタン
Tolvaptan, a Selective Oral Vasopressin V2-Receptor Antagonist, for Hyponatremia

R.W. Schrier and Others

背景

低ナトリウム血症(血清ナトリウム濃度<135 mmol/L)は,慢性心不全患者や肝硬変患者における死亡の予測因子である.現在のところ,急性および慢性の低ナトリウム血症に対する治療は効果が不十分であることが多く,忍容性に乏しい.水利尿(電解質を含まない水分の排泄)を促進する経口バソプレシン V2 受容体拮抗薬トルバプタン(tolvaptan)の,低ナトリウム血症に対する有用性を検討した.

方 法

2 つの多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で,循環血液量の正常な低ナトリウム血症または循環血液量の増加した低ナトリウム血症の患者を対象に,トルバプタンの有効性を評価した.患者を,プラセボの経口投与(223 例)またはトルバプタン 15 mg/日の経口投与(225 例)に無作為に割り付けた.トルバプタンの用量は,血清ナトリウム濃度に基づき 30 mg/日まで増量し,必要に応じてその後 60 mg/日まで増量した.全患者に対する 2 つの主要エンドポイントを,血清ナトリウム濃度曲線下面積の 1 日当りの平均における,ベースラインから 4 日目までの変化と,ベースラインから 30 日目までの変化とした.

結 果

血清ナトリウム濃度は,トルバプタン群でプラセボ群よりも,最初の 4 日間(P<0.001)および全 30 日間の投与後(P<0.001)に大きく上昇した.軽度または重度の低ナトリウム血症患者の状態は改善した(すべての比較について P<0.001).30 日目にトルバプタンの投与を中止したところ,1 週間以内に低ナトリウム血症が再発した.トルバプタンに関連する副作用には口渇,口内乾燥,排尿増加があった.計画していた 2 つの試験の複合解析では,ベースラインから 30 日目までに,トルバプタン群で MOS SF-12 健康調査表の精神面に関する項目(Mental Component of the Medical Outcomes Study 12-item Short-Form General Health Survey)のスコアに有意な改善が認められた.

結 論

循環血液量の正常な低ナトリウム血症または循環血液量の増加した低ナトリウム血症の患者において,経口バソプレシン V2 受容体拮抗薬トルバプタンは,4 日目および 30 日目における血清ナトリウム濃度を上昇させるのに有効であった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00072683 [SALT-1],NCT00201994 [SALT-2])

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 2099 - 112. )