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November 30, 2006 Vol. 355 No. 22

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非アルコール性脂肪性肝炎患者におけるピオグリタゾンのプラセボ対照試験
A Placebo-Controlled Trial of Pioglitazone in Subjects with Nonalcoholic Steatohepatitis

R. Belfort and Others

背景

非アルコール性脂肪性肝炎は,インスリン抵抗性,脂肪変性,小葉中心性線維化の有無を問わない壊死性炎症を特徴とする疾患であるが,この疾患の治療において,有効性が確実に証明されている薬理学的治療はない.ピオグリタゾンは,2 型糖尿病のインスリン抵抗性を改善し,糖代謝および脂質代謝を改善するチアゾリジンジオンである.

方 法

耐糖能異常または 2 型糖尿病を呈し,肝生検で非アルコール性脂肪性肝炎が確認された患者 55 例を,6 ヵ月間,低カロリー食(体重維持に必要な一日摂取量を算出し,そこから 500 kcal/日減らした食事)+ピオグリタゾン(45 mg/日)の投与,または低カロリー食+プラセボの投与に無作為に割り付けた.治療前と治療後に,肝組織学的特徴,磁気共鳴分光法(MRS)を用いた肝脂肪量,経口耐糖能検査(経口糖負荷によって [14C] グルコースを投与し,静脈内投与によって [3H] グルコースを投与)時の糖代謝回転を評価した.

結 果

低カロリー食+ピオグリタゾンでは,低カロリー食+プラセボよりも血糖コントロールと耐糖能が改善し(P<0.001),血漿中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値(AST/GOT)の低下(40% 対 21%,P=0.04)とアラニンアミノトランスフェラーゼ値(ALT/GPT)の低下(58% 対 34%,P<0.001)により,肝アミノトランスフェラーゼ値が正常化した.また,肝脂肪量が低下し(54% 対 0%,P<0.001),肝インスリン感受性が上昇した(48% 対 14%,P=0.008).ピオグリタゾンの投与により,プラセボ群と比較して,脂肪変性(P=0.003),風船様壊死(P=0.02),炎症(P= 0.008)に関する組織学的所見が改善した.ピオグリタゾン群の患者では,プラセボ群と比較して,壊死炎症が大きく軽減したが(85% 対 38%,P=0.001),線維化の軽減に有意差はみられなかった(P=0.08).ピオグリタゾンを投与した 1 例で疲労と軽度の下肢浮腫が発生したが,ほかの有害事象はみられなかった.

結 論

この proof-of-concept 研究では,非アルコール性脂肪性肝炎の患者において,ピオグリタゾンの投与により代謝の改善および組織学的改善が得られた.ピオグリタゾンの長期的な臨床上の利益を評価するには,より長期的で大規模な対照臨床試験が必要である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 2297 - 307. )