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December 7, 2006 Vol. 355 No. 23

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抗菌薬関連出血性大腸炎の原因菌としての Klebsiella oxytoca
Klebsiella oxytoca as a Causative Organism of Antibiotic-Associated Hemorrhagic Colitis

C. Högenauer and Others

背景

抗菌薬関連出血性大腸炎は,Clostridium difficile を認めない独特な種類の抗菌薬関連大腸炎である.その原因は不明であるが,これまでの報告では Klebsiella oxytoca の関与が示唆されている.

方 法

抗菌薬関連大腸炎が疑われたが,C. difficile は陰性であった 22 例の連続症例を検討した.診断のため大腸内視鏡検査を実施し,抗菌薬関連出血性大腸炎と診断された患者では K. oxytoca を検出するために便検体を培養した.K. oxytoca 株を分離し,組織培養検査で細胞毒素産生の有無を調べた.さらに,健常被験者 385 例から採取した便検体も K. oxytoca 検出のために培養した.また,Sprague-Dawley ラットを用いて,抗菌薬関連出血性大腸炎の in vivo 動物モデルを作成した.

結 果

患者 22 例のうち,6 例に抗菌薬関連出血性大腸炎の診断と一致する大腸内視鏡検査所見が認められた.これら 6 例のうち,5 例では K. oxytoca について培養陽性であった.この 5 例では,そのほかに共通した腸内病原菌は検出されなかった.大腸炎発症前に,5 例は全員ペニシリンの投与を受けており,2 例はさらに非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の投与も受けていた.分離した K. oxytoca 株はすべて細胞毒素を産生していた.健常被験者では,1.6%で K. oxytoca が検出された.動物モデルでは,K. oxytoca を接種し,さらにアモキシシリン・クラブラン酸を投与したラットの大腸からのみ K. oxytoca が検出された.これらのラットでは,K. oxytoca への感染により右側出血性大腸炎を起したが,アモキシシリン・クラブラン酸またはインドメタシン(NSAIDs の一種)のいずれか,あるいは両剤を投与した非感染ラットではそのような大腸炎は認められなかった.

結 論

細胞毒素産生 K. oxytoca に関してコッホの条件を確認したことから,K. oxytoca は,抗菌薬関連出血性大腸炎の少なくとも一部において原因菌であることが示唆される.C. difficile 陰性の抗菌薬関連大腸炎患者では,K. oxytoca 感染を考慮に入れるべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 2418 - 26. )