August 17, 2006 Vol. 355 No. 7
黄色ブドウ球菌による菌血症と心内膜炎に対するダプトマイシンと標準治療の比較
Daptomycin versus Standard Therapy for Bacteremia and Endocarditis Caused by Staphylococcus aureus
V.G. Fowler, Jr., and Others
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による菌血症と心内膜炎には,代替療法が必要とされている.
S. aureus によって菌血症を起した患者で,心内膜炎を伴う患者と伴わない患者のうち,124 例をダプトマイシン(daptomycin)6 mg/kg 体重/日を静脈内投与する群に,122 例を低用量のゲンタマイシンを最初の 4 日間投与し,抗ブドウ球菌ペニシリンまたはバンコマイシンを投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性エンドポイントは,投与終了後 42 日目の治療成功とした.
修正 intention-to-treat 解析で,投与終了後 42 日目に治療成功が報告されたのは,ダプトマイシン投与を受けた患者では 120 例中 53 例であったのに対し,標準治療を受けた患者では 115 例中 48 例であった(44.2% 対 41.7%,絶対差 2.4%,95%信頼区間 -10.2~15.1%).この結果は,事前に規定したダプトマイシンの非劣性基準を満たしていた.成功率は,合併症を伴う菌血症,右心系心内膜炎,メチシリン耐性 S. aureus 感染を示した患者のサブグループで同等であった.ダプトマイシン投与は,標準治療と比べて,微生物学的失敗の割合が高かった(19 例 対 11 例,P=0.17).ダプトマイシン群で微生物学的失敗が認められた患者 19 例中,6 例でダプトマイシンに対する感受性が低下した分離株が認められた.同様に,バンコマイシンで治療した患者の分離株でも,バンコマイシンに対する感受性の低下が確認された.標準治療では,ダプトマイシン投与に比べ,投与中止による治療失敗につながる有害事象の発生率が,有意ではなかったもののより高かった(17 例 対 8 例,P=0.06).臨床的に重大な腎機能障害は,ダプトマイシン群の 11.0%と標準治療群の 26.3%に発現した(P=0.004).
S. aureus による菌血症と右心系心内膜炎の治療において,ダプトマイシン投与(6 mg/kg/日)は,標準治療と比べて劣ってはいなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00093067)