August 17, 2006 Vol. 355 No. 7
米国の社会経済層全体に及ぶ障害の勾配
Gradient of Disability across the Socioeconomic Spectrum in the United States
M. Minkler, E. Fuller-Thomson, and J.M. Guralnik
高齢者において,極度の貧困と健康不良とのあいだに関連性があることは長いあいだ認識されているが,米国の中位所得者と上位所得者のあいだで,障害を有する人の分布に勾配があるかどうかについてはあまり検討されてこなかった.年齢 55 歳以上の人において,すべての収入層で身体の機能的制約に勾配が存在するかどうかを明らかにすることを試みた.
データは,米国地域調査(American Community Survey)の方法と質問票を用いた,2000 年国勢調査の補足調査(Census 2000 Supplementary Survey)から入手した.これは,代表 890,698 世帯の全米調査で,回答率は 95%であった.標本は,年齢 55 歳以上の男性 149,000 人,女性 186,675 人を含み,うち男性 32,680 人と女性 48,111 人が,身体の機能的制約(階段昇降や物を持ち上げるといった,基本的な身体活動が 1 つ以上大幅に制限される状態が,長期にわたって持続すること)があると報告した.
社会階級による勾配は,55~84 歳の男性と女性のいずれにも認められ,社会経済的地位が高い層でさえも当てはまった.たとえば,55~64 歳で貧困ラインの 700%以上で生活している人と比較して,同年齢で貧困ラインを下回る人は,機能的制約があると報告するオッズが 6 倍であった.収入が高くなるにつれて,オッズ比は低下した.有意な勾配は 85 歳までみられたが,85 歳より上ではみられなかった.
この結果から,55~84 歳の米国人において,身体の機能的制約の勾配は,社会経済層全体で,社会階級と負の相関を示すことが示唆される.