March 22, 2007 Vol. 356 No. 12
エンテロウイルス 71 型感染後の小児における神経発達と認知機能
Neurodevelopment and Cognition in Children after Enterovirus 71 Infection
L.-Y. Chang and Others
エンテロウイルス 71 型は,アジアおよびその他の地域で手足口病や脳炎の原因としてよくみられる.このウイルス感染が中枢神経系(CNS)に及ぼす神経学的・精神医学的な長期的影響は,十分に解明されていない.
中枢神経症状を伴うエンテロウイルス 71 型に感染した小児 142 例に対して,長期追跡調査を実施した.142 例の内訳は,無菌性髄膜炎 61 例,重度の中枢神経合併症 53 例,中枢神経合併症後の心肺不全 28 例であった.感染後の追跡調査期間中央値 2.9(1.0~7.4)年の時点で,身体診察と神経学的検査を行った.6 歳以下の患児にはデンバー式発達スクリーニング検査(Denver Developmental Screening Test;DDST II),4 歳以上の患児にはウェクスラー式知能検査(Wechsler intelligence test)を実施した.
灰白髄炎様症候群例 16 例中 9 例(56%)と,脳脊髄炎例 5 例中 1 例(20%)に四肢の脱力や萎縮などの後遺症が認められた.中枢神経合併症後の心肺不全例 28 例では,18 例(64%)に四肢の脱力と萎縮が認められ,17 例(61%)は経管栄養を必要とし,16 例(57%)は人工呼吸器による補助を必要とした.DDST II 評価を受けた患児のうち,神経発達遅滞は,重度の中枢神経合併症例では 20 例中 1 例(5%)のみでみられ,心肺不全例では 28 例中 21 例(75%)でみられた(すべての比較について P<0.001).中枢神経合併症後に心肺不全をきたした患児の知能検査のスコアは,中枢神経合併症のみを呈した患児よりも低かった(P=0.003).
中枢神経合併症と心肺不全を伴うエンテロウイルス 71 型感染には,神経学的後遺症,神経発達遅滞,認知機能の低下が関連すると考えられる.中枢神経合併症を発症しても心肺不全を起さなかった患児は,神経発達検査で良好な結果を示した.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00172393)