The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 29, 2007 Vol. 356 No. 13

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

冠動脈硬化の進行に対するトルセトラピブの効果
Effect of Torcetrapib on the Progression of Coronary Atherosclerosis

S.E. Nissen and Others

背景

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値は,心血管リスクと逆相関する.コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬トルセトラピブ(torcetrapib)は,HDL コレステロール値を上昇させるが,この逆相関のメカニズムと関連する機能的効果は依然不明である.

方 法

冠動脈疾患の患者計 1,188 例に,血管内超音波検査を行った.低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を 100 mg/dL(2.59 mmol/L)未満に低下させるためアトルバスタチンを投与した後,患者を,アトルバスタチン単独投与群またはアトルバスタチン+トルセトラピブ 60 mg/日投与群に無作為に割り付けた.24 ヵ月後,910 例(77%)に再び血管内超音波検査を行い,疾患の進行を判定した.

結 果

24 ヵ月後,トルセトラピブ+アトルバスタチン投与により,アトルバスタチン単独投与と比べて,HDL コレステロールの約 61%の相対的上昇と,LDL コレステロールの 20%の相対的低下がみられ,LDL コレステロール 対 HDL コレステロールの比は 1.0 未満に達した.トルセトラピブは,収縮期血圧 4.6 mmHg の上昇とも関連した.アテローム量の比率(主要有効性評価項目)は,アトルバスタチン単独群では 0.19%上昇し,トルセトラピブ+アトルバスタチン群では 0.12%上昇した(P=0.72).副次的評価項目である標準化したアテローム量の変化に関しては,トルセトラピブを支持するわずかな効果が示されたが(P=0.02),もっとも重篤な病変部位ではアテローム量の変化に有意差はみられなかった.

結 論

CETP 阻害薬トルセトラピブは,HDL コレステロールの大幅な上昇および LDL コレステロールの低下と関連していた.また,血圧の上昇とも関連しており,冠動脈硬化の進行に対する有意な抑制作用はみられなかった.こうした有効性の欠如には,この薬剤クラスの作用機序や,分子特異的な有害作用が関連している可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00134173)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 356 : 1304 - 16. )