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May 3, 2007 Vol. 356 No. 18

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糖尿病とその治療が認知機能に及ぼす長期的影響
Long-Term Effect of Diabetes and Its Treatment on Cognitive Function

The DCCT/EDIC Study Research Group

背景

1 型糖尿病が認知能力に及ぼす影響については長年関心が寄せられてきたが,血糖値を非糖尿病範囲に近づけるようにデザインされた治療法の利用や,それに伴う重症低血糖のリスク増加と共に,関心はますます高まっている.

方 法

糖尿病のコントロールと合併症に関する試験(Diabetes Control and Complications Trial;DCCT)とその追跡研究である糖尿病への介入と合併症に関する疫学研究(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications study;EDIC)に登録された計 1,144 例の 1 型糖尿病患者を対象に,DCCT 登録時(平均年齢 27 歳)と平均 18 年後に,同一の包括的な認知機能検査を実施した.追跡期間中に,糖化ヘモグロビン値を測定し,昏睡やけいれんにいたった重症低血糖イベントの頻度を記録した.最初の DCCT での治療群割付け,糖化ヘモグロビン平均値,低血糖イベントの頻度が認知機能評価項目に与える影響の評価を,ベースラインにおける年齢,性別,教育年数,追跡期間,視力,自己報告による末梢神経障害に伴う感覚障害,ならびに DCCT 開始以降の期間に実施された認知機能検査の回数(検査施行の影響を調整するため)で補正して行った.

結 果

コホート集団の 40%が,低血糖性の昏睡またはけいれんを 1 回以上経験したと報告した.重症低血糖の頻度と先行試験での治療群割付けはいずれも,いかなる認知領域の低下とも関連しなかった.糖化ヘモグロビン値が高いほど,運動速度(P=0.001)および精神運動効率(P<0.001)の中等度の低下と関連していたが,ほかの認知領域への影響はみられなかった.

結 論

大規模な 1 型糖尿病患者群を対象に平均 18 年間慎重に追跡調査を行った今回の研究では,重症低血糖の発生率が比較的高いにもかかわらず,長期にわたる認知機能の大幅な低下を示す証拠は認められなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00360893)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 356 : 1842 - 52. )