ヒトパピローマウイルスと口腔咽頭癌の症例対照研究
Case-Control Study of Human Papillomavirus and Oropharyngeal Cancer
G. D'Souza and Others
多くの分子学的知見から,ヒトパピローマウイルス(HPV)は口腔咽頭扁平上皮癌の発症機序にかかわっていることが示唆されているが,疫学的データは一致しない.
HPV 感染と口腔咽頭癌の関連を評価するため,新たに口腔咽頭癌と診断された患者 100 例と癌を認めない対照患者 200 例を対象に,病院ベースの症例対照研究を行った.症例対照比較には多変量ロジスティック回帰モデルを用いた.
口腔咽頭癌は,生涯の腟性交のパートナー数が多いこと(26 人以上)と関連しており(オッズ比 3.1,95%信頼区間 [CI] 1.5~6.5),生涯の口腔性交のパートナー数が多いこと(6 人以上)とも関連していた(オッズ比 3.4,95% CI 1.3~8.8).関連の度合いは,腟性交および口腔性交のパートナー数の増加と共に強まった(傾向性の P 値はそれぞれ 0.002,0.009).口腔咽頭癌は,HPV 16 型(HPV-16)の経口感染(オッズ比 14.6,95% CI 6.3~36.6),37 種の HPV 型いずれかの経口感染(オッズ比 12.3,95% CI 5.4~26.4),HPV 16 型 L1 カプシド蛋白の血清反応陽性(オッズ比 32.2,95% CI 14.6~71.3)と有意な関連があった.HPV 16 型の DNA はパラフィン包埋した腫瘍標本 100 例のうち 72%で検出され(95% CI 62~81),癌患者の 64%では HPV 16 型 E6,E7 癌蛋白,またはその両方について血清反応が陽性であった.HPV 16 型 L1 の血清反応が陽性であることは,多量の喫煙および飲酒の経歴がある対象者(オッズ比 19.4,95% CI 3.3~113.9)とそのような経歴がない対象者(オッズ比 33.6,95% CI 13.3~84.8)の双方において,口腔咽頭癌と強く関連していた.HPV 16 型の経口感染者では,喫煙や飲酒にかかわらず,口腔咽頭癌との関連が同様に強かった.一方,主に HPV 16 型への曝露を認めない対象者では,喫煙と飲酒により口腔咽頭癌との関連が強くなった.
HPV 経口感染は,喫煙および飲酒という確立した危険因子のある対象者とない対象者の双方において,口腔咽頭癌と強い関連がある.