米国における 1980~2000 年の冠動脈性疾患による死亡率低下の要因
Explaining the Decrease in U.S. Deaths from Coronary Disease, 1980-2000
E.S. Ford and Others
米国において,冠動脈性心疾患による死亡率はここ数十年のあいだに大幅に低下している.この低下のうちどの程度が薬物療法や外科的治療によって説明できるのかを,心血管危険因子の変化と比較して検討した.
1980~2000 年の米国の成人(25~84 歳)における,心疾患に特異的な治療の利用と効果,および危険因子の変化に関するデータに,妥当性が確認されている統計学的モデル IMPACT を適用した.2000 年の冠動脈性心疾患による観察死亡数と期待死亡数の差を,解析に含まれる治療法および危険因子に分配した.
1980~2000 年にかけて,冠動脈性心疾患による年齢調整死亡率は,男性では 10 万人当り 542.9 から 266.8 に,女性では 10 万人当り 263.3 から 134.4 に低下し,2000 年には冠動脈性心疾患による死亡は 341,745 例少ない結果となった.これらの低下の約 47%は治療,すなわち心筋梗塞や血行再建術後の二次予防治療(11%),急性心筋梗塞や不安定狭心症の初回治療(10%),心不全治療(9%),慢性狭心症に対する血行再建術(5%),その他の治療(12%)などに起因していた.約 44%は危険因子の変化,すなわち総コレステロール値の低下(24%),収縮期血圧の低下(20%),喫煙率の低下(12%),運動不足の低減(5%)などに起因していたが,これらの低下は,体格指数や糖尿病有病率の上昇によって部分的に相殺された.この 2 つの因子は死亡数増加の原因であった(それぞれ 8%,10%).
米国における 1980~2000 年の冠動脈性心疾患による死亡率低下のうち,約半分は主要な危険因子の減少に起因し,約半分はエビデンスに基づく医学的治療に起因すると考えられる.