February 1, 2007 Vol. 356 No. 5
真性多血症と特発性赤血球増加症における JAK2 エクソン 12 変異
JAK2 Exon 12 Mutations in Polycythemia Vera and Idiopathic Erythrocytosis
L.M. Scott and Others
V617F 変異は,Janus kinase(JAK)2 遺伝子(JAK2)の 617 位のフェニルアラニンをバリンに置換する変異であり,真性多血症や本態性血小板血症,特発性骨髄線維症の患者でよくみられる.一方,V617F 変異をもたない患者における,これらの骨髄増殖性疾患の分子基盤は不明である.
V617F 陰性の真性多血症または特発性赤血球増加症の患者を対象に,JAK および signal transducer and activator of transcription(STAT)遺伝子ファミリーのメンバーについて新規変異を探索した.これらの変異の特徴を生化学的に調べるとともに,骨髄移植モデルマウスにおいても調べた.
V617F 陰性の患者 10 例において,JAK2 エクソン 12 に影響を及ぼす 4 つの機能獲得型の体細胞変異を同定した.JAK2 エクソン 12 変異を有する患者は,孤立性の赤血球増加症および特徴的な骨髄形態を示し,血清エリスロポエチン濃度が低下した患者もみられた.患者の血液サンプルから,外因性エリスロポエチンを加えずに赤血球コロニーを増殖することができた.こうした赤血球コロニーでは,変異はいずれもヘテロ接合性であったのに対し,V617F 陽性の真性多血症患者の多くではホモ接合性変異のコロニーが生じた.マウスエリスロポエチン受容体を発現し,エクソン 12 変異をもつ BaF3 細胞は,インターロイキン 3 を添加しなくても増殖した.また,野生型 JAK2 または V617F JAK2 で形質導入された細胞と比べて,JAK2 および細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)1,2 のリン酸化も上昇した.これらのエクソン 12 変異のうち,3 つで JAK2 の 539 位のリジンがロイシンに置換していた.この変異は,レトロウイルス骨髄移植モデルマウスにおいて,赤血球増加症などの骨髄増殖性の表現型をもたらした.
JAK2 エクソン 12 変異は,現在真性多血症または特発性赤血球増加症の診断を受けている患者を襲う,特徴的な骨髄増殖症候群を特徴付けるものである.