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February 22, 2007 Vol. 356 No. 8

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Bjornstad 症候群の原因としての BCS1L 遺伝子におけるミスセンス変異
Missense Mutations in the BCS1L Gene as a Cause of the Bjornstad Syndrome

J.T. Hinson and Others

背景

Bjornstad 症候群は,感音性難聴と毛髪異常を伴う常染色体劣性疾患であり,染色体 2q34-36 上のこれまで特定されていない遺伝子の変異が原因となっている.

方 法

D2S2210D2S2244 のあいだの 44 遺伝子の,詳細な遺伝子マップの作成と DNA 配列決定により,BCS1L 変異が明らかになった.機能解析により,BCS1L 変異が Bjornstad 症候群を引き起す機序を明らかにした.

結 果

BCS1L は,ミトコンドリア内の複合体 III の形成に必要な AAA ファミリー ATPase の 1 つをコードしている.BCS1L 変異は,Bjornstad 症候群に加えて,複合体 III 欠損ならびに GRACILE 症候群(新生児において,重篤なミトコンドリア障害の特徴を示す多臓器症状ならびに神経症状を有する致死的病態)の原因となる.Bjornstad 症候群の患者は,蛋白 - 蛋白相互作用に関与するアミノ酸残基を変化させる変異を有しているが,複合体 III 欠損患者における変異は,関連する AAA ファミリー ATPase の結晶構造から推定すると,ATP に結合するアミノ酸残基を変化させる.生化学検査により,複合体 III 欠損変異は,BCS1L 関連複合体の ATP 依存的な形成を阻害するというモデルを支持する証拠が得られた.すべての変異 BCS1L 蛋白は,複合体 III の形成を妨げ,ミトコンドリア電子伝達系の活性を低下させ,活性酸素種の産生を亢進する.しかし,ミトコンドリア量を増加させるのは複合体 III 欠損と関連する変異のみであり,これにより活性酸素種の産生がさらに亢進する.

結 論

BCS1L 変異は,高度に限定された毛髪異常と感音性難聴(Bjornstad 症候群)から深刻な多臓器不全(複合体 III 欠損と GRACILE 症候群)にいたる疾患の表現型の原因となる.すべての BCS1L 変異は,ミトコンドリアのレスピラソーム(ヒトミトコンドリアにおける呼吸の基本単位)の形成を妨げるが,変異の臨床発現は活性酸素種の産生と相関していた.Bjornstad 症候群の原因となる変異は,ミトコンドリア機能,とくに活性酸素種の産生に対する,耳および毛髪組織の高い感受性を説明している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 356 : 809 - 19. )