The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

September 13, 2007 Vol. 357 No. 11

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

希釈ディーゼル排気の吸入が冠動脈性心疾患の男性における虚血および血栓の発生に及ぼす影響
Ischemic and Thrombotic Effects of Dilute Diesel-Exhaust Inhalation in Men with Coronary Heart Disease

N.L. Mills and Others

背景

交通による大気汚染への曝露は有害な心血管イベントと関連しているが,その機序は明らかにされていない.大気汚染が安定冠動脈性心疾患患者の心筋,血管,および線溶能に対して直接及ぼす影響を評価するため,コントロール下で希釈ディーゼル排気への曝露を実施した.

方 法

心筋梗塞の既往のある男性 20 例を対象に,間隔を空けた 2 回の試験期間に,コントロール下の曝露施設において,休息時および中等度の運動時に 1 時間希釈ディーゼル排気(300 μg/m3)または濾過空気に曝露する無作為化二重盲検クロスオーバー試験を行った.曝露時には 12 誘導心電図を継続的に取り,ST 部を分析して心筋虚血を定量した.曝露の 6 時間後,作動薬の動脈内注入により血管運動機能と線溶能を評価した.

結 果

2 回の曝露期間中,心拍数は運動に伴って増加したが(P<0.001),増加はディーゼル排気曝露時と濾過空気曝露時で同等であった(P=0.67).運動に誘発される ST 低下は全例で認められたが,ディーゼル排気への曝露時では虚血負荷の増加がより大きかった(-22±4 mV 秒 対 -8±6 mV 秒,P<0.001).ディーゼル排気への曝露により,既存の血管運動機能不全は悪化しなかったが,血管内皮の組織プラスミノーゲンアクチベーターの急激な放出が減少した(P=0.009,曲線下面積における 35%の減少).

結 論

希釈ディーゼル排気への短時間の曝露は,安定冠動脈性心疾患の男性において心筋虚血を促進し,内因性線溶能を阻害する.われわれの知見は,燃焼による大気汚染への曝露が有害な心血管イベントと関連するという報告を一部説明する可能性のある,虚血および血栓の発生機序を示唆するものである.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00437138)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 357 : 1075 - 82. )