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November 22, 2007 Vol. 357 No. 21

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冠動脈イベントの高リスク患者に対するトルセトラピブの効果
Effects of Torcetrapib in Patients at High Risk for Coronary Events

P.J. Barter and Others

背景

コレステリルエステル転送蛋白(CETP)を阻害することは,血漿リポ蛋白濃度にかなりの影響を与えることが明らかになっている.われわれは,強力な CETP 阻害薬であるトルセトラピブ(torcetrapib)により,主要心血管イベントを減少させられるかどうかを検討した.トルセトラピブ投与を受けた患者で,死亡および心イベントのリスクが増加したため,試験は早期に打ち切られた.

方 法

心血管リスクの高い 15,067 例を対象に無作為化二重盲検試験を実施した.患者を,トルセトラピブ+アトルバスタチンの併用投与,あるいはアトルバスタチン単独投与に割り付けた.主要転帰は,主要心血管イベントの初回発症までの時間とした.主要心血管イベントは,冠動脈性心疾患による死亡,非致死的心筋梗塞,脳卒中,不安定狭心症による入院と定義した.

結 果

12 ヵ月の時点で,トルセトラピブ群では,ベースラインと比較して高比重リポ蛋白コレステロールが 72.1%上昇し,低比重リポ蛋白コレステロールが 24.9%低下した(両比較について P<0.001).さらに,収縮期血圧が 5.4 mmHg 上昇し,血清カリウムが低下し,血清ナトリウム,重炭酸塩,アルドステロンが上昇した(全比較について P<0.001).心血管イベントのリスク(ハザード比 1.25,95%信頼区間 [CI] 1.09~1.44,P=0.001)および全死因死亡のリスク(ハザード比 1.58,95% CI 1.14~2.19,P=0.006)も増加した.事後解析により,カリウムの低下あるいは重炭酸塩の上昇が中央値より大きかったトルセトラピブ群の患者において,死亡リスクの増加が示された.

結 論

トルセトラピブ療法では,結果として死亡・罹患リスクが増加したが,その機序は明らかでない.トルセトラピブには標的外の効果があることを示すエビデンスはあったが,CETP 阻害に関連する有害作用があることは否定できない.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00134264)

本論文(10.1056/NEJMoa0706628)は,2007 年 11 月 5 日に www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 357 : 2109 - 22. )