December 20, 2007 Vol. 357 No. 25
TP53 変異のある乳癌間質細胞とリンパ節転移
Breast-Cancer Stromal Cells with TP53 Mutations and Nodal Metastases
A. Patocs and Others
癌とその微小環境の相互干渉の重要性に対する認識が高まってきている.癌抑制遺伝子 TP53 の変異による不活性化と,腫瘍の微小環境である間質細胞におけるゲノム変化は,臨床転帰に影響を及ぼすという仮説を立てた.
遺伝性乳癌患者 43 例と散発性乳癌患者 175 例から分離した腫瘍性上皮細胞および間質細胞由来の DNA について,TP53 変異の解析と,ヘテロ接合性の消失およびアレル不均衡に関するゲノムワイド解析を行った.コンパートメント特有のパターンと TP53 変異を解析した.コンパートメント特有の TP53 の状態,ヘテロ接合性の消失またはアレル不均衡,臨床的・病理学的特徴の関連性を解析した.
TP53 変異は,遺伝性乳癌と散発的乳癌の両方において,ヘテロ接合性消失およびアレル不均衡の増幅と関連を示したが,遺伝性乳癌患者のサンプルのほうが,散発性乳癌患者のサンプルよりも変異の頻度が高かった(74.4% 対 42.3%,P=0.001).変異 TP53 と関連を示したマイクロサテライト遺伝子座は,遺伝性乳癌の間質細胞では 1 個のみ(2p25.1)であったが,散発性乳癌の細胞では 66 個存在した.散発性乳癌の間質における TP53 の体細胞変異は,局所リンパ節転移と関連を示したが(P=0.003),上皮ではこのような関連はみられなかった.散発性乳癌の間質において,ヘテロ接合性消失とアレル不均衡の増幅に関係する 5 個の遺伝子座の特異的な組合せは,TP53 変異がなくてもリンパ節転移と関連した.遺伝性乳癌の臨床的特徴と病理学的特徴に,TP53 の体細胞変異との関連は見出されなかった.
散発性乳癌において,間質におけるヘテロ接合性消失またはアレル不均衡は,TP53 の体細胞変異および局所リンパ節転移と関連しているが,遺伝性乳癌ではこのような関連はみられない.