The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

May 1, 2008 Vol. 358 No. 18

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

小児および成人における心肥大の遺伝的原因の共有
Shared Genetic Causes of Cardiac Hypertrophy in Children and Adults

H. Morita and Others

背景

心筋症の家族歴がなく特発性心肥大が小児期に発症した場合は,予後不良の前兆となりうる.小児期発症の心肥大は,成人における遺伝性の心筋症と形態学的に類似しているにもかかわらず,遺伝的要因の寄与については明らかにされていない.

方 法

15 歳以前(平均 [±SD] 年齢 6.99±6.12 歳)に特発性心肥大と診断された小児 84 例(男児 63 例,女児 21 例)の家族歴および病歴を評価した.次の 8 つの遺伝子;MYH7,MYBPC3,TNNT2,TNNI3,TPM1,MYL3,MYL2,ACTC の配列決定を行った.これらの遺伝子はサルコメア蛋白をコードしており,これらに変異が生じた場合,成人期に心筋症が発症する.また,代謝蛋白をコードする PRKAG2 および LAMP2 の配列決定も行った.これらの遺伝子に変異が生じると,心室肥大が早期に発症する可能性がある.

結 果

変異は,心筋症の家族歴がない患児 51 例中 25 例,および家族性心筋症を有する患児 33 例中 21 例で確認された.孤発例とみられる 25 例中 11 例のうち,4 例は新規の変異で,7 例の変異は遺伝によるものであった.変異は主に MYH7 および MYBPC3 に発生しており(75%を超える患児で確認),MYBPC3 のミスセンス変異は,成人期発症の心筋症に比べ有意に多く検出された(P<0.005).心肥大の重症度および収縮機能は,いずれも家族歴や遺伝状態とは相関していなかった.心臓移植および突然死は,変異陽性患児で変異陰性患児よりも多く,植込み型除細動器の使用頻度は,変異陽性の家族歴を有する患児で高かった(P=0.007).

結 論

小児期発症の心肥大は,孤発例とみられる症例の約半数と家族性症例の約 2/3 が遺伝的要因によるものである.小児期発症の心肥大では,速やかに遺伝子解析および家族調査を行うべきである.

本論文(10.1056/NEJMoa075463)は,2008 年 4 月 9 日に www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 1899 - 908. )