高血糖と妊娠の有害転帰
Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcomes
The HAPO Study Cooperative Research Group
妊婦の高血糖は,糖尿病の高血糖に比べて重症度が低いが,妊娠の有害転帰のリスク増加と関連するかどうかについては議論がある.
9 ヵ国 15 施設の妊婦計 25,505 例に対し,妊娠 24~32 週の時点で 75 g 経口ブドウ糖負荷試験を行った.空腹時血糖値が 105 mg/dL(5.8 mmol/L)以下,および負荷後 2 時間の血糖値が 200 mg/dL(11.1 mmol/L)以下の場合,データの盲検性を維持した.主要転帰は,在胎週数に対応する出生体重が 90 パーセンタイルを超えていること,初回帝王切開分娩,新生児低血糖症の臨床診断,臍帯血の血清 C ペプチド値が 90 パーセンタイルを超えていることとした.副次的転帰は,妊娠 37 週より前の分娩,肩甲難産または分娩外傷,新生児集中治療の必要性,高ビリルビン血症,妊娠高血圧腎症とした.
盲検化したデータのある 23,316 例について,空腹時血糖値の 1 SD 上昇(6.9 mg/dL [0.4 mmol/L]),負荷後 1 時間血糖値の 1 SD 上昇(30.9 mg/dL [1.7 mmol/L]),2 時間血糖値の 1 SD 上昇(23.5 mg/dL [1.3 mmol/L])と関連する妊娠の有害転帰の補正オッズ比を算出した.出生体重が 90 パーセンタイルを超えるオッズ比は,それぞれ 1.38(95%信頼区間 [CI] 1.32~1.44),1.46(1.39~1.53),1.38(1.32~1.44);臍帯血の血清 C ペプチド値が 90 パーセンタイルを超えるオッズ比は 1.55(95% CI 1.47~1.64),1.46(1.38~1.54),1.37(1.30~1.44);初回帝王切開分娩のオッズ比は 1.11(95% CI 1.06~1.15),1.10(1.06~1.15),1.08(1.03~1.12);新生児低血糖症のオッズ比は 1.08(95% CI 0.98~1.19),1.13(1.03~1.26),1.10(1.00~1.12)であった.リスクが増加する明らかな閾値は存在しなかった.副次的転帰についても有意な関連がみられたが,主要転帰に比べて弱い傾向にあった.
この結果は,妊婦の血糖値は,糖尿病の診断値より低くても,出生体重の増加および臍帯血の血清 C ペプチド値の上昇と強くかつ連続的に関連することを示唆している.