急性脳内出血に対する遺伝子組換え活性型第 VII 因子の有効性と安全性
Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII for Acute Intracerebral Hemorrhage
S.A. Mayer and Others
脳内出血は,脳卒中の中でもっとも治療が困難である.われわれは,遺伝子組換え活性型第 VII 因子(recombinant activated factor VII;rFVIIa)により血腫の増大が抑制され,生存率と機能転帰が改善するという先行試験の結果を裏付けるため,今回の第 3 相試験を実施した.
脳内出血を起こした患者 841 例を,脳卒中発症から 4 時間以内にプラセボ(268 例),rFVIIa 20 μg/kg 体重(276 例),rFVIIa 80 μg/kg 体重(297 例)のいずれかを投与する 3 つの群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは不良転帰とし,その定義は脳卒中後 90 日の時点での修正 Rankin スケールによる重度の障害または死亡とした.
rFVIIa 80 μg/kg を用いた治療により,血腫量の増加は有意に抑制された.24 時間の時点における脳内出血量の平均推定増加量は,プラセボ群で 26%であったのに対し,rFVIIa 20 μg/kg 群では 18%(P=0.09),rFVIIa 80 μg/kg 群では 11%であった(P<0.001).脳内出血量の増加は,プラセボ群と比較して,rFVIIa 20 μg/kg 群では 2.6 mL 減少し(95%信頼区間 [CI] -0.3~5.5,P=0.08),rFVIIa 80 μg/kg 群では 3.8 mL 減少した(95% CI 0.9~6.7,P=0.009).このように出血が減少したにもかかわらず,不良な臨床転帰を示す患者の割合には 3 群間で有意差は認められなかった(プラセボ群 24%,rFVIIa 20 μg/kg 群 26%,rFVIIa 80 μg/kg 群 29%).重大な血栓塞栓性の有害事象の全体の頻度は 3 群で同等であったが,動脈イベントの頻度は,rFVIIa 80 μg/kg 群のほうがプラセボ群よりも高かった(9% 対 4%,P=0.04).
rFVIIa を用いた止血療法により,血腫の増大は抑制されたが,脳内出血後の生存率や機能転帰は改善しなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00127283)