小児における外傷性脳損傷後の低体温療法
Hypothermia Therapy after Traumatic Brain Injury in Children
J.S. Hutchison and Others
低体温療法は,外傷性脳損傷の動物モデルにおいて,生存と神経学的転帰を改善する.しかし,重度の外傷性脳損傷を有する小児の神経学的転帰と死亡率に対する低体温療法の効果は明らかにされていない.
多施設共同多国間試験において,重度の外傷性脳損傷を有する小児を,受傷後 8 時間以内に開始する低体温療法(32.5℃で 24 時間)と,正常体温での治療(37.0℃)のいずれかに無作為に割り付けた.主要評価項目は,6 ヵ月の時点の小児脳機能カテゴリースコア(Pediatric Cerebral Performance Category score)で,転帰不良(重度の障害,遷延性植物状態,死亡)と評価された小児の割合とした.
計 225 例の患児を低体温群と正常体温群に無作為に割り付けた.両群の平均到達体温はそれぞれ 33.1±1.2℃,36.9±0.5℃ であった.6 ヵ月の時点で転帰不良であった患児は,低体温群では 31%であったのに対し,正常体温群では 22%であった(相対リスク 1.41,95%信頼区間 [CI] 0.89~2.22,P=0.14).死亡は,低体温群で 23 件(21%),正常体温群で 14 件(12%)発生した(相対リスク 1.40,95% CI 0.90~2.27,P=0.06).低体温群では,正常体温群と比較して,復温期に低血圧が多くみられ(P=0.047),血管作用薬の投与が多かった(P<0.001).集中治療室の在室期間,入院期間,その他の有害事象は,両群で同等であった.
重度の外傷性脳損傷を有する小児に対し,低体温療法を受傷後 8 時間以内に開始し,24 時間継続しても,神経学的転帰は改善されず,死亡率が上昇する可能性がある.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN77393684)