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January 31, 2008 Vol. 358 No. 5

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米国のイラク帰還兵における軽度外傷性脳損傷
Mild Traumatic Brain Injury in U.S. Soldiers Returning form Iraq

C.W. Hoge and Others

背景

イラク戦争における医療上の重大な懸念は,とくに爆発が原因の,軽度外傷性脳損傷,すなわち脳振盪の長期化する可能性のある影響である.しかし,戦闘に関連する軽度外傷性脳損傷の疫学についての理解は乏しい.

方 法

イラクに 1 年間派遣され,帰還後 3~4 ヵ月が経過した米国陸軍歩兵 2,525 人について調査を行った.妥当性を確認した臨床的評価手法を用いて,軽度外傷性脳損傷を報告した兵士とその他の損傷を報告した兵士を比較した.軽度外傷性脳損傷は,意識消失あるいは精神の変調(放心または錯乱など)を伴う損傷と定義した.

結 果

2,525 人の兵士のうち,124 例(4.9%)が意識消失を伴う損傷を,260 例(10.3%)が精神の変調を伴う損傷を,435 例(17.2%)がその他の損傷を派遣中に受けたと報告した.心的外傷後ストレス障害(PTSD)の基準を満たしたのは,意識消失を報告した兵士では 43.9%であったのに対し,精神の変調を報告した兵士では 27.3%,その他の損傷を報告した兵士では 16.2%,損傷を受けなかった兵士では 9.1%であった.軽度外傷性脳損傷を報告した兵士で,とくに意識消失を起こした兵士では,その他の損傷を報告した兵士と比べて,全般的な健康状態不良,欠勤,通院,多数の身体症状や脳振盪後の症状を報告する傾向が有意に強かった.しかし,PTSD と抑うつについて補正すると,軽度外傷性脳損傷と身体的な健康に関する転帰や症状との関連は,頭痛を除き有意ではなくなった.

結 論

イラクに派遣された兵士に発生した軽度外傷性脳損傷(脳振盪)は,帰国後 3~4 ヵ月における PTSD および身体的な健康問題と強く関連していた.PTSD と抑うつは,軽度外傷性脳損傷と身体的な健康問題の関係における重要なメディエータである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 453 - 63. )