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February 21, 2008 Vol. 358 No. 8

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冠動脈バイパス術中のアプロチニン投与と死亡リスク
Aprotinin during Coronary-Artery Bypass Grafting and Risk of Death

S. Schneeweiss and Others

背景

アプロチニン(トラジロール)は冠動脈バイパス術(CABG)中の出血を軽減させるために用いられるが,この方法により死亡率が上昇することを示唆するエビデンスが増加している.

方 法

Premier 社のパースペクティブ比較データベース(Perspective Comparative Database)の電子管理記録を用い,CABG 施行日に,アプロチニン(33,517 例)またはアミノカプロン酸(44,682 例)の手術室使用料が付けられていた入院患者について調査を行った.退院時の状態が死亡であった患者数を表にし,以下の 3 種類の解析を実施した:多変量ロジスティック回帰分析(一次解析);十分量の試験薬の投与を受けた患者,試験期間中に 50 件以上の CABG を行った外科医による CABG を受けた患者,入院 3 日目以降に手術が行われたため追加の共変量 10 項目に関する情報が入手可能であった患者から成る,高度に選択された患者サブコホートにおける傾向スコア法;担当外科医が 2 種類の試験薬の一方に対して強い選好を示した患者のデータに関する操作変数法.

結 果

全体で,アプロチニン群 33,517 例中 1,512 例(4.5%)と,アミノカプロン酸群 44,682 例中 1,101 例(2.5%)が死亡した.患者と病院の特性 41 項目について補正すると,推定死亡リスクは,アプロチニン群でアミノカプロン酸群よりも 64%高かった(相対リスク 1.64,95%信頼区間 [CI] 1.50~1.78).術後 7 日間におけるアプロチニン群の院内死亡の補正相対リスクは 1.78 であった(95% CI 1.56~2.02).傾向スコア法における相対リスクは 1.32 であった(95% CI 1.08~1.63).操作変数法から,アプロチニンの使用は,患者 100 例あたり 1.59 件の超過死亡リスクと関連することが明らかになった(95% CI 0.14~3.04).術後に血行再建術と透析が行われる頻度は,アプロチニン群のほうがアミノカプロン酸群よりも高かった.

結 論

CABG 施行日にアプロチニンの単剤投与を受けた患者は,アミノカプロン酸を単剤投与された患者よりも死亡率が高かった.患者の特性,外科医の特性のいずれによってもこの差を説明することはできず,交絡因子を調整するためのアプローチを複数行っても差は残った.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 771 - 83. )