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August 21, 2008 Vol. 359 No. 8

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SLCO1B1 の変異とスタチン誘発性ミオパチーに 関するゲノムワイド研究
SLCO1B1 Variants and Statin-Induced Myopathy - A Genomewide Study

The SEARCH Collaborative Group

背景

スタチン療法により低比重リポ蛋白コレステロールを低下させると,心血管イベントが大幅に減少する.コレステロールの低下が大きいほど,その利益は大きくなる可能性がある.まれに,スタチン療法に関連して,とくに高用量投与でほかの特定の薬剤と併用した場合にミオパチーが発現する.

方 法

ミオパチーが確定した患者または初期のミオパチー患者 85 例と対照 90 例を対象として,約 300,000 種類のマーカー(およびさらなる精密マッピング)を用いたゲノムワイド関連研究を行った.全例が,12,000 例を対象とした試験の一環としてシンバスタチン 80 mg/日を服用していた.20,000 例を対象としたシンバスタチン 40 mg/日の試験で再現性を検討した.

結 果

ゲノムワイドスキャンにより,ミオパチーと第 12 染色体上にある SLCO1B1 内の一塩基多型(SNP)rs4363657 との,一つの強い関連が示された(P=4×10-9).SLCO1B1 は有機アニオン輸送ポリペプチド OATP1B1 をコードしており,これはスタチンの肝取込みを調節することが知られている.非コード領域の SNP rs4363657 は,スタチン代謝との関連が示されている非同義 SNP の rs4149056 とほぼ完全な連鎖不平衡にあった(r2=0.97).集団における rs4149056 の C アレルの出現率は 15%であった.ミオパチーのオッズ比は,C アレル 1 コピーあたり 4.5(95%信頼区間 [CI] 2.6~7.7)であり,CC ホモ接合体では TT ホモ接合体との比較において 16.9(95% CI 4.7~61.1)であった.これらのミオパチーの症例のうち,60%以上は C 変異体に起因すると考えられた.rs4149056 とミオパチーとの関連は,シンバスタチン 40 mg/日の試験で再現された.また,rs4149056 とシンバスタチンのコレステロール低下作用との関連も示された.その他の領域の SNP には,ミオパチーとの明かな関連は認められなかった.

結 論

スタチン誘発性ミオパチーのリスク増加に強く関連した,SLCO1B1 においてよくみられる変異が同定された.これらの変異体の遺伝子型を決定すれば,より安全かつ効果的にスタチン療法による利益を得られる可能性がある.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN74348595)

本論文(10.1056/NEJMoa0801936)は,2008 年 7 月 23 日に www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 789 - 99. )