January 1, 2009 Vol. 360 No. 1
集中治療室の患者に対する消化管と中咽頭の除菌
Decontamination of the Digestive Tract and Oropharynx in ICU Patients
A.M.G.A. de Smet and Others
選択的消化管除菌(selective digestive tract decontamination:SDD)と中咽頭の選択的除菌(selective oropharyngeal decontamination:SOD)は,集中治療中の患者の一部に用いられる感染予防策であるが,患者の転帰への影響に関する報告は一致していない.
オランダにおける 13 の集中治療室(ICU)でのクラスター無作為化を用いたクロスオーバー試験で,SDD と SOD の効果を比較・検討した.挿管が 48 時間を超えると予想された患者,または ICU 滞在が 72 時間を超えると予想された患者を適格とした.それぞれの ICU で,3 つのレジメン(SDD,SOD,標準治療)を 6 ヵ月にわたり順不同に実施した.主要エンドポイントは 28 日死亡率とした.SDD は,セフォタキシムの 4 日間の静脈内投与に加え,トブラマイシン,コリスチン,アムホテリシン B の中咽頭と胃への局所投与とした.SOD は,同じ抗菌薬の中咽頭のみへの投与とした.抗菌薬耐性を解析するため,点有病率を毎月調査した.
計 5,939 例を試験に登録し,そのうち 1,990 例を標準治療群に,1,904 例を SOD 群に,2,045 例を SDD 群に割り付けた.28 日の時点での粗死亡率は,標準治療群 27.5%,SOD 群 26.6%,SDD 群 26.9%であった.年齢,性別,急性生理異常・慢性度による重症度評価(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation:APACHE II)スコア,挿管の状況,担当の診療科を共変量とした変量効果ロジスティック回帰モデルでは,標準治療群に対する 28 日の時点での死亡のオッズ比は,SOD 群 0.86(95%信頼区間 [CI] 0.74~0.99),SDD 群0.83(95% CI 0.72~0.97)であった.
ICU 患者集団において,標準治療群の 28 日死亡率は 27.5%であったのに対し,SDD 群では推定 3.5 パーセントポイント低下し,SOD 群では推定 2.9 パーセントポイント低下した.(Controlled Clinical Trials 番号:ISRCTN35176830)