October 8, 2009 Vol. 361 No. 15
常在糸状虫感染に対するドキシサイクリンの無作為化試験
A Randomized Trial of Doxycycline for Mansonella perstans Infection
Y.I. Coulibaly and Others
常在糸状虫(Mansonella perstans)感染はアフリカ地域でよくみられるが,同地域ではリンパ系糸状虫(フィラリア)症の原因虫であるバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)も流行している.常在糸状虫は,標準的な抗フィラリア薬に抵抗性を示す.最近,常在糸状虫をはじめとするほとんどのフィラリア種に細胞内共生細菌(たとえばボルバキア)が発見され,ミクロフィラリア血症を抑制するための治療薬の新たな選択肢が与えられた.
非盲検無作為化試験において,マリ共和国の 4 つの村で,常在糸状虫によるミクロフィラリア血症の患者を,バンクロフト糸状虫混合感染の有無を問わず募集し,ドキシサイクリン 200 mg/日を 6 週間投与する群(106 例)と,治療を行わない群(110 例)に無作為に割り付けた.6 ヵ月後,さらにバンクロフト糸状虫混合感染例を,アルベンダゾール(400 mg)とイベルメクチン(150 μg/kg)を単回投与する群と,治療を行わない群に割り付けた.最初の 6 週間の試験期間中に,有害事象について患者を連日観察した.常在糸状虫とバンクロフト糸状虫のミクロフィラリアの血中濃度を,6 ヵ月,12 ヵ月,36 ヵ月の時点で評価した.
12 ヵ月の時点で,血液塗抹標本 60 μL 中に常在糸状虫のミクロフィラリアが検出されなかったのは,無治療群では 63 例中 10 例(16%)であったのに対し,ドキシサイクリン単独投与群では 69 例中 67 例(97%)であった(相対リスク 6.18,95%信頼区間 3.63~11.89,P<0.001).36 ヵ月の時点で,ドキシサイクリン単独投与群 64 例中 48 例(75%)で常在糸状虫によるミクロフィラリア血症が抑制されており,これはドキシサイクリンのマクロフィラリアに対する殺虫作用と一致するものであった.ドキシサイクリン投与群では,無治療群と比較して嘔吐が多く認められた(17% 対 4%).
これらの結果は,常在糸状虫には細胞内共生細菌ボルバキアが共生しているというこれまでの知見と一致しており,ドキシサイクリン療法が常在糸状虫症に有効な治療法の 1 つであることが示唆された.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00340691)