October 15, 2009 Vol. 361 No. 16
進行した認知症の臨床経過
The Clinical Course of Advanced Dementia
S.L. Mitchell and Others
米国で認知症は主要な死因であるが,末期の病態としての認識は低い.進行した認知症を有する介護施設入居者の臨床経過に関する詳細な報告はまだない.
22 ヵ所の介護施設で,進行した認知症の入居者 323 人とその医療に関する意思決定の代理人を 18 ヵ月間追跡した.データを収集し,入居者の生存,臨床的合併症,症状,治療の特徴と,意思決定代理人が進行した認知症患者について予想される予後と臨床的合併症を理解しているかどうかを明らかにした.
18 ヵ月間に,入居者の 54.8%が死亡した.肺炎は 41.1%,発熱のエピソードは 52.6%,摂食に関する問題は 85.8%にみられた.年齢,性別,罹患期間について補正後の 6 ヵ月死亡率は,肺炎を発症した入居者で 46.7%,発熱のエピソードを呈した入居者で 44.5%,摂食に関する問題がみられた入居者で 38.6%であった.呼吸困難(46.0%),疼痛(39.1%)など苦痛を伴う症状が高頻度にみられた.死亡前の 3 ヵ月間に,入居者の 40.7%が負担を伴う介入(入院,救急治療室受診,非経口治療,経管栄養)を 1 回以上受けていた.意思決定代理人が進行した認知症で予想される予後不良と臨床的合併症を理解している場合は,理解していない場合と比べて,入居者が死亡前の 3 ヵ月間に負担を伴う介入を受ける確率は大幅に低かった(補正後のオッズ比 0.12,95%信頼区間 0.04~0.37).
進行した認知症患者では,合併症として肺炎,発熱のエピソード,摂食の問題の頻度が高く,6 ヵ月死亡率の上昇と関連している.このような患者には苦痛を伴う症状がみられ,負担を伴う介入が行われることが多い.意思決定代理人が予後と臨床経過を理解している場合,患者が終末期に積極的治療を受ける確率は減少する.