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November 19, 2009 Vol. 361 No. 21

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クールー曝露と共局在する新規の保護的プリオン蛋白変異
A Novel Protective Prion Protein Variant that Colocalizes with Kuru Exposure

S. Mead and Others

背景

クールーは,パプアニューギニア高地のごく限られた地理的地域で発生した,致死性・流行性のプリオン病である.流行期には,主に成人女性と小児が罹患した.伝播経路であった部族内の食人習慣が中断されて以来,その発症率は着実に低下している.

方 法

パプアニューギニア東部高地の 3,000 人を超える集団を対象に,遺伝・選択に関する臨床評価と系統学的評価を行った.対象集団のうち 709 人は食人葬に参加しており,その後 152 人がクールーにより死亡した.

結 果

パプアニューギニアにおいて,クールーに曝露されながら流行期を生き延びた人々の大半では,耐性因子として知られているプリオン蛋白遺伝子(PRNP)のコドン 129 がヘテロ接合体であった.今回われわれは新規の PRNP 変異型である G127V を報告する.G127V は,クールーの流行地域に住む人々に特異的に認められ,また,高曝露地域に住む,PRNP のコドン 129 がメチオニンホモ接合体で,本来ならばクールーへの感受性を有する女性の半数で認められた.この対立遺伝子はクールーの発症率のもっとも高い地域で高頻度に認められるが,クールー患者と世界各地の非曝露集団では認められない.系統学的解析により,この保護的対立遺伝子を有する家系では,地理的にマッチさせた対照家族よりも,クールーの発症率が有意に低いことが示された.

結 論

127V 多型はクールー流行の誘因となった病原性変異というよりはむしろ,クールー流行期に選択的に獲得されたプリオン病耐性因子である.PRNP のコドン 127,129 の変異型は,集団におけるプリオン病の流行に対する遺伝的反応を示すものであり,近年ヒトでみられた選択の強力な事例である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 2056 - 65. )