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July 16, 2009 Vol. 361 No. 3

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加齢に伴う記憶力低下と APOE ε 4 の影響に関する経時モデル
Longitudinal Modeling of Age-Related Memory Decline and the APOE ε 4 Effect

R.J. Caselli and Others

背景

APOE ε 4 対立遺伝子は,晩期発症型アルツハイマー病のリスクに関連している.ホモ接合/ヘテロ接合の APOE ε 4 対立遺伝子を有する場合と,有しない場合とで,記憶力が低下し始める年齢が異なるかどうかは明らかにされていない.

方 法

地域広告を用いて 21~97 歳の認知機能の正常な被験者を募集し,APOE ε 4 の遺伝子型と保有状況によるグループ分けを行った.その後,経時的な神経心理学的検査によってこれらの被験者を追跡した.追跡調査中に軽度認知機能障害または認知症を発症した被験者は除外した.加齢に伴う経時的変化に関する混合モデルを用いて,事前に規定した認知機能指標の低下速度を,APOE ε 4 対立遺伝子の保有者と非保有者で比較した.

結 果

815 例を解析した.内訳は,APOE ε 4 保有者 317 例(ホモ接合 79 例,ヘテロ接合 238 例),非保有者 498 例であった.保有者は非保有者に比べ,概して年齢が低く(平均年齢 58.0 歳 対 61.4 歳,P<0.001),追跡期間が長かったが(5.3 年 対 4.7 年,P=0.01),正規の教育を受けた期間(15.4 年)と女性の割合(69%)は同等であった.保有者の場合,経時的な記憶力低下は 60 歳より前に始まり,非保有者に比べてその低下速度が速く(P=0.03),対立遺伝子量効果の可能性が認められた(P=0.008).視空間認識と全般的精神状態に関する評価項目に対しても同様の影響が認められたが,影響はより弱いものであった.

結 論

APOE ε 4 保有者における加齢に伴う記憶力低下は,正常な臨床状態にもかかわらず 60 歳より前に低下がみられる点で,APOE ε 4 非保有者とは異なる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 255 - 63. )