The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

July 23, 2009 Vol. 361 No. 4

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

非定型溶血性尿毒症症候群におけるトロンボモジュリン遺伝子変異
Thrombomodulin Mutations in Atypical Hemolytic-Uremic Syndrome

M. Delvaeye and Others

背景

溶血性尿毒症症候群は,微小血管性溶血性貧血,血小板減少,腎不全の 3 主徴を特徴とする.一般的な型は,志賀毒素産生菌(赤痢菌の一種)への感染を契機に発症し,予後は良好である.非定型はより頻度が低く,全症例の約 10%を占め,予後は不良である.非定型溶血性尿毒症症候群患者の約半数は,補体系を制御する遺伝子に変異を有している.残りの半数についてはその遺伝因子は明らかにされていない.トロンボモジュリンは血管内皮細胞上に存在する糖蛋白で,抗血栓・抗炎症・細胞保護作用を有しているが,この研究では,非定型溶血性尿毒症症候群におけるトロンボモジュリンの役割について検討した.

方 法

非定型溶血性尿毒症症候群患者 152 例と対照者 380 例を対象に,トロンボモジュリン遺伝子(THBD)の全コード領域を調査した.精製蛋白と細胞発現系を用いて,トロンボモジュリンが補体系を制御するか検討し,その機序を明らかにした.培養細胞内でトロンボモジュリンの変異体を発現させ,非定型溶血性尿毒症症候群と関連するトロンボモジュリン遺伝子のミスセンス変異が補体の活性化にどのような影響を与えるかを検討した.

結 果

152 例の非定型溶血性尿毒症症候群患者のうち,血縁関係のない 7 例において,THBD に 6 種類のヘテロ接合性ミスセンス変異が認められた.in vitro で,トロンボモジュリンは C3b と H 因子(CFH)に結合し,補因子である CFH または C4b 結合蛋白の存在下で,I 因子を介した C3b の不活化を促進することにより,補体を負の方向に制御することが示された.トロンボモジュリンはまた,血漿プロカルボキシペプチダーゼ B を活性化することにより,アナフィラトキシン C3a,C5a の不活化を促進する.非定型溶血性尿毒症症候群と関連するトロンボモジュリンの変異体を発現した培養細胞では,C3b 不活化能とプロカルボキシペプチダーゼ B 活性化能が減弱しており,その結果,活性化した補体に対する防御能が低下した.

結 論

非定型溶血性尿毒症症候群患者の約 5%で,トロンボモジュリンの機能を低下させる変異が認められる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 345 - 57. )