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July 30, 2009 Vol. 361 No. 5

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熱帯熱マラリア原虫マラリアにおけるアルテミシニン耐性
Artemisinin Resistance in Plasmodium falciparum Malaria

A.M. Dondorp and Others

背景

熱帯熱マラリアの流行地であるすべての国では,アルテミシニン(artemisinin)をベースとした併用療法が第一選択療法として推奨されている.タイ・カンボジア国境地帯では,これまでに抗マラリア薬耐性が確認されており,アルテミシニンを用いた治療の効果が低下しているのではないかという懸念がある.

方 法

カンボジア西部のパイリン(Pailin)と,タイ北西部のワンファ(Wang Pha)で 2 件の無作為化非盲検試験を行い,合併症のない熱帯熱マラリア患者を対象に 2 種類の治療法の有効性を比較した.患者を,アーテスネート 2 mg/kg/日を 7 日間経口投与する単剤群と,アーテスネート 4 mg/kg/日を 3 日間投与した後,メフロキン計 25 mg/kg を 2 回に分けて投与する併用群のいずれかに割り付けた.in vitroin vivo での熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の感受性,アーテスネートの薬物動態,薬剤耐性の分子マーカーを評価した.

結 果

それぞれの試験で,各 40 例を対象に試験を行った.全体の寄生虫クリアランス時間中央値は,パイリンでは 84 時間(四分位範囲 60~96 時間),ワンファでは 48 時間(四分位範囲 36~66 時間)であった(P<0.001).ポリメラーゼ連鎖反応法で確認された再発は,パイリンでは単剤群 20 例中 6 例(30%),併用群 20 例中 1 例(5%)であったのに対し,ワンファでは単剤群 20 例中 2 例(10%),併用群 20 例中 1 例(5%)であった(P=0.31).このように寄生虫学的効果に顕著な差がみられたが,年齢,アーテスネートやジヒドロアルテミシニンの薬物動態,同位体を用いた原虫の in vitro 感受性試験の結果,P. falciparum の薬剤耐性に関連していると推定される分子的要因(多剤耐性蛋白 [PfMDR1] をコードする遺伝子の変異や増幅,筋小胞体-小胞体カルシウム ATPase6 [PfSERCA] をコードする遺伝子の変異)の違いではこれらの効果の差は説明されなかった.有害事象は軽度であり,治療群間で有意差はみられなかった.

結 論

P. falciparum のアーテスネートに対する in vivo 感受性は,カンボジア西部のほうがタイ北西部よりも低下していた.耐性の特徴は in vivo での寄生虫クリアランスに要する時間の長さであるが,従来の in vitro 感受性試験での感受性の低下は伴わない.拡大防止措置が早急に必要である.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00493363,Current Controlled Trials 番号:ISRCTN64835265)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 455 - 67. )