March 18, 2010 Vol. 362 No. 11
医師の医療費特性 ― 信頼性と誤分類リスク
Physician Cost Profiling ― Reliability and Risk of Misclassification
J.L. Adams and Others
医療費分析ツールに基づき,より費用のかからない医療を提供するとされる医師を患者が選択するよう,インセンティブを設ける保険商品が一般的になりつつある.しかし,低医療費医師と高医療費医師を正確に判別できるかどうかは,これらのツールでは厳格な評価がなされていないため,明らかではない.
米国マサチューセッツ州の保険会社 4 社の医療保険プランから,2004 年と 2005 年の保険料請求データを収集した.市販のソフトを用いて,臨床的に同質な医療事象(たとえば糖尿病,心臓発作,尿路感染症の治療)を組み立て,それぞれを医師に割り当て,割り当てた全事象をもとに各医師の医療資源利用(医療費)の特性の概要を導き出した.各医師の医療費特性スコアの信頼度(シグナル対ノイズ比)を 0~1 の尺度で推定した.0 は,医師の医療費特性におけるすべての差異が精度の低さに由来すること(ノイズ)を示し,1 はすべての差異が医療費における真のばらつきに由来すること(シグナル)を示す.この信頼性の結果を用いて,2 段階分類システムを用いる保険商品においてコストパフォーマンスの分類が不正確であった医師の割合を,専門分野別に推定した.その際,コスト分析値が最低四分位にある医師が「低医療費」に分類されている.
信頼性の中央値は,血管外科の 0.05 から消化器科および耳鼻咽喉科の 0.79 の範囲であった.全体として,医師の 59%で,医療費特性スコアの信頼性は最適以下を示す指標として一般的に用いられる 0.70 より低かった.今回の結果から,2 段階分類システムでは 22%の医師が誤分類されていると推定された.
医療費の観点で医師を分類する現行の手法は,誤った結果をもたらす可能性がある.