April 22, 2010 Vol. 362 No. 16
壊死性膵炎に対するステップアップアプローチと開腹膵壊死部摘除術の比較
A Step-up Approach or Open Necrosectomy for Necrotizing Pancreatitis
H.C. van Santvoort and Others
壊死組織の感染を伴う壊死性膵炎は,合併症発生率や死亡率が高いことと関連している.標準治療は開腹膵壊死部摘除術であるが,低侵襲のステップアップアプローチによって転帰が改善する可能性がある.
多施設共同試験において,壊死組織の感染が疑われるか確認された壊死性膵炎患者 88 例を,最初に開腹膵壊死部摘除術を受ける群と,ステップアップアプローチを受ける群に無作為に割り付けた.ステップアップアプローチは,経皮的ドレナージを行い,その後必要に応じて低侵襲の後腹膜膵壊死部摘除術を行うこととした.主要エンドポイントは,重大な合併症(多臓器不全・多発性全身性合併症の新規発症,内臓穿孔・腸管皮膚瘻,出血)および死亡の複合とした.
主要エンドポイントは,開腹膵壊死部摘除術群 45 例中 31 例(69%),ステップアップアプローチ群 43 例中 17 例(40%)で発生した(ステップアップアプローチ群のリスク比 0.57,95%信頼区間 0.38~0.87,P=0.006).ステップアップアプローチ群の患者の 35%には経皮的ドレナージのみを行った.多臓器不全が新たに発症する頻度は,ステップアップアプローチ群のほうが開腹膵壊死部摘除術群より低かった(12% 対 40%,P=0.002).死亡率に 2 群間で有意差は認められなかった(19% 対 16%,P=0.70).ステップアップアプローチ群では腹壁瘢痕ヘルニアの発生率(7% 対 24%,P=0.03),糖尿病の新規発症率(16% 対 38%,P=0.02)が低かった.
壊死組織の感染を伴う壊死性膵炎患者では,開腹膵壊死部摘除術と比べて,低侵襲のステップアップアプローチにより,重大な合併症と死亡の複合エンドポイントの発生率が低下した.(Current Controlled Trials 番号:IRCTN13975868)