集団内の急性心筋梗塞の発症率と転帰にみられる傾向
Population Trends in the Incidence and Outcomes of Acute Myocardial Infarction
R.W. Yeh and Others
集団内の心筋梗塞の発症率と転帰に関する最近の傾向を明らかにした研究はほとんどない.
大規模かつ多様な地域集団において,1999~2008 年に心筋梗塞を発症して入院した 30 歳以上の患者を同定した.年齢と性別で補正後,全心筋梗塞の発症率と,ST 上昇型心筋梗塞・非 ST 上昇型心筋梗塞で分けた発症率を算出した.患者背景,外来での薬物療法,入院中の心臓バイオマーカー値は健康保険データベースから同定し,30 日死亡率は行政データベース,州の死亡データ,社会保障庁(Social Security Administration)のファイルを用いて確認した.
1999~2008 年の 18,691,131 人年の追跡期間において,心筋梗塞による入院 46,086 件を同定した.年齢と性別で補正した心筋梗塞の発症率は,1999 年の 100,000 人年あたり 274 例から,2000 年は 100,000 人年あたり 287 例へと上昇した.その後は年々低下し,2008 年には 100,000 人年あたり 208 例となり,研究期間を通じて 24%の相対的低下がみられた.年齢と性別で補正した ST 上昇型心筋梗塞の発症率は,研究期間を通じて低下した(1999 年の 100,000 人年あたり 133 例から 2008 年の 100,000 人年あたり 50 例へ,線形傾向について P<0.001).30 日死亡率は,2008 年のほうが 1999 年より有意に低かった(補正オッズ比 0.76,95%信頼区間 0.65~0.89).
大規模な地域集団内で,心筋梗塞の発症率は 2000 年以降有意に低下し,ST 上昇型心筋梗塞の発症率は 1999 年以降顕著に低下した.心筋梗塞による短期致命率の低下には,ST 上昇型心筋梗塞の発症率の低下と,非 ST 上昇型心筋梗塞後の死亡率の低下が一部寄与しているものと考えられる.