The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 4, 2010 Vol. 362 No. 5

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

再発性多発性硬化症に対する経口フィンゴリモドのプラセボ対照試験
A Placebo-Controlled Trial of Oral Fingolimod in Relapsing Multiple Sclerosis

L. Kappos and Others

背景

経口フィンゴリモド(fingolimod)は,リンパ節からのリンパ球放出を阻害するスフィンゴシン-1-リン酸受容体調節薬である.多発性硬化症を対象とした経口フィンゴリモドの第 2 相,第 3 相試験では,プラセボやインターフェロン β-1a 筋肉注射と比べて,再発率と MRI で評価したエンドポイントが有意に改善することが示された.

方 法

24 ヵ月間の二重盲検無作為化試験において,18~55 歳の再発寛解型多発性硬化症で,総合障害度評価尺度(Expanded Disability Status Scale;0~10 点で,点数が高いほど障害度が高い)が 0~5.5 点で,再発が過去 1 年間に 1 回以上,または過去 2 年間に 2 回以上あった患者を登録した.患者に,経口フィンゴリモド 0.5 mg もしくは 1.25 mg を 1 日 1 回,またはプラセボを投与した.エンドポイントは,年間再発率(主要エンドポイント),障害進行までの期間(副次的エンドポイント)などとした.

結 果

1,272 例中 1,033 例(81.2%)が試験を完了した.年間再発率は,フィンゴリモド 0.5 mg 群 0.18,フィンゴリモド 1.25 mg 群 0.16,プラセボ群 0.40 であった(いずれの用量もプラセボとの比較で P<0.001).フィンゴリモド 0.5 mg 群と 1.25 mg 群では,24 ヵ月間の障害進行リスクが有意に低下した(ハザード比はそれぞれ 0.70 と 0.68,いずれもプラセボとの比較で P=0.02).障害進行の累積確率(3 ヵ月後に確認)は,フィンゴリモド 0.5 mg 群 17.7%,フィンゴリモド 1.25 mg 群 16.6%,プラセボ群 24.1%であった.MRI 関連評価項目(T2 強調画像上の新規病変・拡大病変数,ガドリニウム増強病変,脳容積の減少)について,フィンゴリモドはいずれの用量でもプラセボより優れていた(24 ヵ月後のすべての比較について P<0.001).試験中止となった原因やフィンゴリモド関連の有害事象は,フィンゴリモド投与開始時の徐脈と房室ブロック,黄斑浮腫,肝酵素値上昇,軽度高血圧などであった.

結 論

今回検討した経口フィンゴリモドの用量はいずれも,プラセボと比べて,再発率,障害進行リスク,MRI で評価したエンドポイントを改善した.これらの有益性は,可能性のある長期リスクと比較検討する必要がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00289978)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 362 : 387 - 401. )