September 9, 2010 Vol. 363 No. 11
大腸手術における感染予防のためのゲンタマイシン–コラーゲンスポンジ
Gentamicin–Collagen Sponge for Infection Prophylaxis in Colorectal Surgery
E. Bennett-Guerrero and Others
予防的全身抗菌薬のルーチンの使用にもかかわらず発生する大腸手術後の手術部位感染は,依然として罹患率の上昇や医療費の増加と関連している.ゲンタマイシン–コラーゲンスポンジは,埋込み型の局所抗菌薬で,54 ヵ国で外科的埋込みが承認されている.1985 年以降,100 万例を超える患者がこのスポンジによる治療を受けている.
第 3 相試験において,米国の 39 施設で開腹大腸手術または腹腔鏡補助下大腸手術を受ける患者 602 例を,縫合時に筋膜の上に 2 つのゲンタマイシン–コラーゲンスポンジを挿入する群(スポンジ群)と,介入を行わない群(対照群)に割り付けた.全例に予防的全身抗菌薬投与を含む標準的な治療を行った.主要エンドポイントは,割付けを知らない臨床事象分類委員会によって判定された,術後 60 日以内に生じた手術部位感染とした.
手術部位感染の発生率は,スポンジ群(300 例中 90 例 [30.0%])のほうが対照群(302 例中 63 例 [20.9%])より高かった(P=0.01).表層感染はスポンジ群の 20.3%,対照群の 13.6%でみられ(P=0.03),深部感染はスポンジ群の 8.3%,対照群の 6.0%でみられた(P=0.26).スポンジ群の患者は創関連の徴候・症状により救急外来や外科外来を訪れる割合が高く(19.7% 対 対照群 11.0%,P=0.004),手術部位感染で入院する割合も高かった(7.0% 対 4.3%,P=0.15).有害事象の発生頻度に,両群間で有意差は認められなかった.
大規模多施設共同試験により,ゲンタマイシン–コラーゲンスポンジは,大腸手術を受ける患者の手術部位感染の予防に有効ではなく,逆に手術部位感染の有意な増加につながると考えられる.(Innocoll Technologies 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00600925)