December 2, 2010 Vol. 363 No. 23
ぶどう膜悪性黒色腫における GNA11 の変異
Mutations in GNA11 in Uveal Melanoma
C.D. Van Raamsdonk and Others
ぶどう膜悪性黒色腫は,眼内腫瘍の中でも頻度が高い.腫瘍の転移に対する有効な治療は存在しない.ぶどう膜悪性黒色腫の 40%で,ヘテロ三量体 G 蛋白質 α サブユニットをコードする遺伝子 GNAQ の変異が認められる.
種類の異なるメラニン細胞性新生物 713 個(ぶどう膜悪性黒色腫 186 個,青色母斑 139 個,その他の母斑 106 個,その他の黒色腫 282 個)を対象として,GNAQ と GNAQ のパラログである GNA11 のエクソン 5 の配列決定を行った.また,これらの検体のうち 453 個を対象に GNAQ と GNA11 のエクソン 4 の配列決定を行い,ぶどう膜悪性黒色腫 97 個と青色母斑 45 個を対象に GNAQ と GNA11 の遺伝情報をコードしているすべてのエクソンの配列決定を行った.
GNA11 と GNAQ の双方で,相互に異なるパターンを示すエクソン 5(Q209 に影響を及ぼす)とエクソン 4(R183 に影響を及ぼす)の体細胞変異が認められた.GNA11 の Q209 の変異は,青色母斑の 7%,原発性ぶどう膜悪性黒色腫の 32%,転移ぶどう膜悪性黒色腫の 57%で認められた.これに対し,GNAQ の Q209 の変異は,青色母斑の 55%,ぶどう膜悪性黒色腫の 45%,転移ぶどう膜悪性黒色腫の 22%で認められた.R183 の変異は,GNAQ,GNA11 のいずれにおいても Q209 の変異に比べて少なかった(青色母斑の 2%,ぶどう膜悪性黒色腫の 6%).GNA11 の変異は,マウスモデルで自然転移腫瘍を誘発し,マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ経路を活性化した.
今回解析したぶどう膜悪性黒色腫の 83%で,GNAQ または GNA11 の体細胞変異が認められた.これら 2 つの遺伝子が関与する経路の恒常的活性化は,ぶどう膜悪性黒色腫の発症に大きく関与すると考えられる.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)