August 19, 2010 Vol. 363 No. 8
生体腎移植ドナーの健康転帰における人種間のばらつき
Racial Variation in Medical Outcomes among Living Kidney Donors
K.L. Lentine and Others
生体腎移植ドナーの健康転帰に関するデータは不足しており,とくに白人以外のデータが不足している.
米国臓器移植ネットワーク(Organ Procurement and Transplantation Network:OPTN)の個人同定指標を米国のある民間医療保険会社の管理目的のデータとリンクさせ,1987 年 10 月~2007 年 7 月に生体腎移植ドナーとなり,2000~07 年のどこかの時点でこの保険会社から腎提供後の腎摘出に対する保険給付を受けた 4,650 例を対象に,後ろ向き研究を行った.腎摘出後の医学的診断,もしくは治療を要する状態を診療報酬請求により確認した.保険給付の観察期間に対応するため左側打ち切り,右側打ち切りを含む Cox 回帰分析を用いて,腎摘出後診断の絶対有病率と有病率比を推定した 2005~06 年の全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の対象者を一般集団として用いて,有病率パターンを比較した.
ドナーは 76.3%が白人,13.1%が黒人,8.2%がラテン系アメリカ人,2.4%がその他の人種・民族であった.腎提供から保険給付終了までの期間の中央値は 7.7 年であった.腎提供後,黒人ドナーは,白人ドナーに比べて高血圧(補正ハザード比 1.52,95%信頼区間 [CI] 1.23~1.88),薬物療法を要する糖尿病(補正ハザード比 2.31,95% CI 1.33~3.98),慢性腎臓病(補正ハザード比 2.32,95% CI 1.48~3.62)のリスクが高かった.ラテン系アメリカ人ドナーについても,白人ドナーに比べこれらのリスクが高かった.全ドナーにおける糖尿病の絶対有病率は一般集団より高くなかったが,高血圧の有病率は NHANES の一部のサブグループの推定有病率より高かった.末期腎不全が認められたのはドナーの 1%未満であったが,黒人ドナーのほうが白人ドナーより多く認められた.
米国の一般集団と同様に,生体腎移植ドナーの健康状態にも人種格差が生じている.人口統計学的に多様な腎ドナーの健康転帰について,さらに注意を向ける必要がある.(米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所ほかから研究助成を受けた.)