August 26, 2010 Vol. 363 No. 9
常染色体優性多発性嚢胞腎におけるシロリムスと腎肥大
Sirolimus and Kidney Growth in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease
A.L. Serra and Others
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)では,哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)経路の異常な活性化と,進行性腎肥大との関連が示されている.シロリムス(sirolimus)は mTOR のシグナル伝達を抑制する.
18 ヵ月間の非盲検無作為化比較対照試験において,ADPKD 患者の腎容積の増加はシロリムスにより抑制されるかどうかを検討した.年齢 18~40 歳の患者 100 例を,シロリムス(目標用量 2 mg/日)を投与する群と,標準的な治療を行う群に無作為に割り付けた.推定クレアチニンクリアランスは全例 70 mL/分以上であった.経時的に撮像した MRI で多発性嚢胞腎の容積を測定した.主要転帰は,盲検下で評価する 18 ヵ月後の総腎容積とした.副次的転帰は,18 ヵ月後の糸球体濾過量と尿中アルブミン排泄量とした.
無作為化時の総腎容積の中央値は,シロリムス群 907 cm3(四分位範囲 577~1,330),対照群 1,003 cm3(四分位範囲 574~1,422)であった.18 ヵ月間の増加分の中央値は,シロリムス群 99 cm3(四分位範囲 43~173),対照群 97 cm3(四分位範囲 37~181)であった.18 ヵ月の時点で,シロリムス群の総腎容積の中央値は,対照群の 102%であった(95%信頼区間 99~105,P=0.26).糸球体濾過量に 2 群間で有意差は認められなかったが,尿中アルブミン排泄量はシロリムス群のほうが多かった.
ADPKD を有する初期の慢性腎臓病の成人患者に対し,18 ヵ月間シロリムスを投与しても,多発性嚢胞腎の肥大は抑制されなかった.(Wyeth 社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00346918)