October 13, 2011 Vol. 365 No. 15
幼児における水中油型乳剤アジュバント添加インフルエンザワクチン
Oil-in-Water Emulsion Adjuvant with Influenza Vaccine in Young Children
T. Vesikari and Others
乳幼児における不活化インフルエンザワクチンの有効性は乏しいことが知られている.
インフルエンザワクチンを接種したことのない生後 6 ヵ月以上 72 ヵ月未満の健常児 4,707 例を対象に,水中油型乳剤アジュバント MF59 が三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)の有効性に及ぼす影響について検討した.対象を 3 群に無作為に割り付け,各群とも,連続した 2 回のインフルエンザ流行期に,割り付けられたワクチンを 28 日間隔で 2 回接種した.2 群には年齢により用量調節した MF59 アジュバントを添加した TIV または添加しない TIV を,第 3 の群には対照(非インフルエンザ)ワクチンを接種し,インフルエンザ様疾患に対する絶対効果と相対効果を評価した.インフルエンザ様疾患はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により確認した.
2 回のインフルエンザ流行期を通してのインフルエンザ様疾患の発症率は,MF59 アジュバント添加ワクチン(ATIV)群 0.7%,アジュバント非添加ワクチン(TIV)群 2.8%,対照ワクチン群 4.7%であった.全インフルエンザ株(110 例中 94 例はワクチンと一致する H3N2 ウイルス)に対する絶対効果は,ATIV 86%(95%信頼区間 [CI] 74~93),TIV 43%(95% CI 15~61)であった.ATIV の TIV に対する相対効果は 75%(95% CI 55~87)であった.ATIV の有効率は,生後 6 ヵ月以上 36 ヵ月未満児 79%(95% CI 55~90),36 ヵ月以上 72 ヵ月未満児 92%(95% CI 77~97)であったのに対し,TIV の有効率は,それぞれ 40%(95% CI -6~66),45%(95% CI 6~68)であった.抗体反応は ATIV のほうが高く,その状態は 181 日目まで持続した.年少のグループでは,インフルエンザワクチンに対する全身反応・局所反応の発現率は,ATIV とTIVで同程度であった(相対リスク 1.04,95% CI 0.98~1.09).しかし,年長のグループでは,全身性イベントの頻度が,ATIV 接種後(63%)のほうが TIV 接種後(44%),対照ワクチン接種後(50%)より高かった.重篤な有害事象は 3 つのワクチン群で同程度にみられた.
乳幼児において,MF59 アジュバントを添加したインフルエンザワクチンは,PCR 法で確認されるインフルエンザに対して有効である.(Novartis Vaccines and Diagnostics 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00644059)