December 1, 2011 Vol. 365 No. 22
冠動脈疾患の進展に対する 2 種類の強化スタチン療法の効果
Effect of Two Intensive Statin Regimens on Progression of Coronary Disease
S.J. Nicholls and Others
スタチンを用いると,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させるその能力に比例して,有害な心血管転帰が減少し冠動脈硬化進展を抑制する.しかし,強化スタチン療法により病変の退縮が得られるかどうかを検討した試験や,スタチンの最大量投与に代わるアプローチを比較した試験はほとんど存在しない.
冠動脈疾患患者 1,039 例を対象に,血管内超音波検査をベースラインと,アトルバスタチン 80 mg/日またはロスバスタチン 40 mg/日の 104 週間の投与を終えた時点で経時的に行い,冠動脈硬化進展に対するこれら 2 種類の強化スタチン療法の効果を比較するとともに,安全性および副作用のプロファイルを検討した.
104 週間の治療後に,ロスバスタチン群ではアトルバスタチン群に比べ LDL コレステロール値が低く(62.6 mg/dL 対 70.2 mg/dL [1.62 mmol/L 対 1.82 mmol/L],P<0.001),高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値が高かった(50.4 mg/dL 対 48.6 mg/dL [1.30 mmol/L 対 1.26 mmol/L],P=0.01).主要有効性エンドポイントであるアテローム容積率(PAV)は,アトルバスタチン群では 0.99%(95%信頼区間 [CI] -1.19~-0.63)低下し,ロスバスタチン群では 1.22%(95% CI -1.52~-0.90)低下した(P=0.17).副次的有効性エンドポイントである標準化総アテローム容積(TAV)に対する効果は,ロスバスタチン群のほうがアトルバスタチン群よりも優れており,-6.39 mm3(95% CI -7.52~-5.12)に対し -4.42 mm3(95% CI -5.98~-3.26)であった(P=0.01).両剤とも大部分の患者に病変の退縮をもたらし,PAV についてはアトルバスタチン群の 63.2%,ロスバスタチン群の 68.5%で得られ(P=0.07),TAV についてはそれぞれ 64.7%と 71.3%で得られた(P=0.02).両剤とも副作用プロファイルは忍容しうるものであり,臨床検査値異常と心血管イベントの発現率は低かった.
ロスバスタチンおよびアトルバスタチンの最大量投与により,冠動脈硬化の有意な退縮が得られた.ロスバスタチン群では LDL コレステロール値がより低く,HDL コレステロール値がより高くなったが,PAV の退縮の程度は 2 群で同等であった.(AstraZeneca Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT000620542)