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July 28, 2011 Vol. 365 No. 4

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Wnt シグナル伝達とデュピュイトラン病
Wnt Signaling and Dupuytren's Disease

G.H. Dolmans and Others

背景

デュピュイトラン病は手指の良性線維腫症で,屈曲拘縮(デュピュイトラン拘縮)を引き起こす.われわれは,複数の遺伝的因子と環境因子がこの疾患への感受性に影響を及ぼすという仮説を立て,その発症機序に関する理解を深めるために感受性遺伝子の同定を試みた.

方 法

オランダ人のデュピュイトラン病患者 960 例と対照 3,117 例(発見セット)において,疾患と遺伝子マーカーの関連を検証するためゲノムワイド関連研究を行った.発見セットでデュピュイトラン病ときわめて強い関連(P<1×10-4)を示した一塩基多型(SNP)35 個を,ドイツ,英国,オランダの 3 つの独立した症例集団,患者計 1,365 例,対照計 8,445 例において検証した.

結 果

最初に,デュピュイトラン病と 3 遺伝子座の 8 個の SNP とのあいだにゲノムワイドに有意な関連が認められた.再現性試験と,デュピュイトラン病患者 2,325 例と対照者 11,562 例の全データの統合解析によって,異なる 9 遺伝子座の SNP 11 個との関連が認められた(P<5.0×10-8).このうち 6 個の遺伝子座に,Wnt シグナル伝達経路に関与することが知られている遺伝子が含まれていた:WNT4(rs7524102)(P=2.8×10-9,オッズ比 1.28),SFRP4(rs16879765)(P=5.6×10-39,オッズ比 1.98),WNT2(rs4730775)(P=3.0×10-8,オッズ比 0.83),RSPO2(rs611744)(P=7.9×10-15,オッズ比 0.75),SULF1(rs2912522)(P=2.0×10-13,オッズ比 0.72),WNT7B(rs6519955)(P=3.2×10-33,オッズ比 1.54).

結 論

この研究により,異なる 9 個の遺伝子座がデュピュイトラン病への遺伝的感受性に関与することが示唆された.これらの 9 遺伝子座中 6 個に,Wnt シグナル伝達経路の蛋白をコードする遺伝子が存在するという事実から,この経路の異常がデュピュイトラン病における線維腫症の進行過程の鍵となることが示唆される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 307 - 17. )