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August 18, 2011 Vol. 365 No. 7

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プロテウス症候群に関連する AKT1 のモザイク活性化変異
A Mosaic Activating Mutation in AKT1 Associated with the Proteus Syndrome

M.J. Lindhurst and Others

背景

プロテウス症候群は,皮膚,結合組織,脳,その他組織の過成長を特徴とする.この症候群は,非モザイク状態では致死的となる変異が体細胞においてモザイク状態にあることに起因するという仮説が立てられている.

方 法

プロテウス症候群患者から採取した生検標本を用いて DNA のエキソーム塩基配列決定を行い,得られた DNA 配列を,同一患者の非罹患組織の DNA 配列と比較した.プロテウス症候群患者 29 例,158 検体の DNA を特注の制限酵素アッセイを用いて解析し,エキソーム塩基配列決定で観察された関連を確認し拡大した.続いて,ウエスタンブロット法によりリン酸化特異的抗体を用いて,罹患組織における AKT 蛋白の活性化を測定した.

結 果

AKT1 キナーゼは細胞増殖やアポトーシスなどの過程に介在することが知られている酵素であるが,プロテウス症候群患者 29 例中 26 例が AKT1 キナーゼをコードする癌遺伝子 AKT1 に体細胞活性化変異(c.49G→A,p.Glu17Lys)を有していた.プロテウス症候群患者の組織と細胞株には,変異対立遺伝子が 1%から約 50%の割合で混合して存在した.変異細胞株では,対照細胞株と比べて AKT リン酸化の亢進が認められた.同一の出発培養から樹立され,変異状態の異なる単一細胞クローンのペアでは,AKT リン酸化のレベルが異なった.

結 論

プロテウス症候群は AKT1 の体細胞活性化変異に起因する.このことにより,体細胞モザイク現象の仮説が裏付けられ,この障害にみられる過成長と腫瘍感受性という特徴的な臨床所見に PI3K-AKT 経路の活性化が関与することが示唆される.(米国国立ヒトゲノム研究所の所内研究プログラムから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 611 - 9. )