癌診断後の自殺と心血管系死亡
Suicide and Cardiovascular Death after a Cancer Diagnosis
F. Fang and Others
癌の診断を受けることは衝撃的な経験であり,その人の健康に,癌そのものや治療による影響を上回る,有害な影響を即時的にもたらす可能性がある.
スウェーデン人 6,073,240 人を対象とした歴史的コホート研究において,ポアソン回帰モデルと負の二項回帰モデルを用いて,1991~2006 年における癌の診断と,直後の自殺または心血管系の原因による死亡のリスクとの関連を検討した.未測定の交絡因子について補正するために,このコホートで,自殺または心血管疾患により死亡した癌患者全例を対象に,コホート内自己対照ケースクロスオーバー解析も行った.
癌のない人と比較して,癌の診断を受けた患者における自殺の相対リスクは,診断後 1 週間で 12.6(95%信頼区間 [CI] 8.6~17.8)(29 例,発生率 2.50/1,000 人年),1 年間で 3.1(95% CI 2.7~3.5)(260 例,発生率 0.60/1,000 人年)であった.心血管系死亡の相対リスクは,診断後 1 週間で 5.6(95% CI 5.2~5.9)(1,318 例,発生率 116.80/1,000 人年),4 週間で 3.3(95% CI 3.1~3.4)(2,641 例,発生率 65.81/1,000 人年)であった.リスク上昇は診断後 1 年間で急速に減少した.リスク上昇は,予後不良な癌で顕著であった.ケースクロスオーバー解析により,主要解析の結果がおおむね確認された.
この大規模コホート研究では,癌の診断を受けて間もない患者において,癌のない人と比べて,自殺と心血管系の原因による死亡の両リスクが上昇していた.(スウェーデン労働生活・社会研究評議会ほかから研究助成を受けた.)