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April 26, 2012 Vol. 366 No. 17

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GUCY2C の活性化変異に起因する家族性下痢症候群
Familial Diarrhea Syndrome Caused by an Activating GUCY2C Mutation

T. Fiskerstrand and Others

背景

家族性下痢症は,ほとんどの症例が重症であり,劣性変異に起因する.われわれは,ノルウェー人一家系 32 人に認められた,新たな優性疾患の原因を報告する.罹患者は,早期に発症し,比較的軽症で,炎症性腸疾患,腸閉塞,食道炎への高い感受性に関連する慢性下痢を呈する.

方 法

第 12 染色体上の候補領域を同定するため,一塩基多型アレイに基づく連鎖解析を行った.その後細菌性・耐熱性エンテロトキシンに対する腸内受容体である,グアニル酸シクラーゼ C(GC-C)をコードする GUCY2C の塩基配列を決定した.GUCY2C 以外の遺伝子の変異が疾患感受性を引き起こしている可能性や,これに寄与している可能性を排除するため,罹患家族 3 人の候補領域全体のエクソーム塩基配列決定を行った.HEK293T 細胞を用いて変異 GC-C の機能的解析を行った.

結 果

罹患家族全例で,GUCY2C にヘテロ接合性ミスセンス変異(c.2519G→T)が同定された.候補領域内の遺伝子のエクソンにそれ以外のまれな変異は認められなかった.変異受容体をそのリガンドに曝露すると,環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生が著しく増加した.これによって,嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の過剰活性化が引き起こされ,腸細胞からの塩化物と水分の分泌が増加する可能性があり,これによって罹患家族にみられる慢性下痢の説明がつくと考えられる.

結 論

GC-C シグナルの亢進は,正常な腸機能を乱し,塩化物分泌の増加,または細胞内 cGMP の増加によるさらなる作用を介して炎症促進作用を及ぼすと考えられる.GC-C-CFTR 経路に影響を及ぼす遺伝子変異の,クローン病などの病態との関連についてはさらなる研究が必要である.(Helse Vest [西ノルウェー地域保健局],インド政府科学技術省から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 1586 - 95. )