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May 17, 2012 Vol. 366 No. 20

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ナタリズマブに関連する進行性多巣性白質脳症のリスク
Risk of Natalizumab-Associated Progressive Multifocal Leukoencephalopathy

G. Bloomgren and Others

背景

進行性多巣性白質脳症(PML)は,ナタリズマブ(natalizumab)による治療に関連する.多発性硬化症患者の PML リスクの定量化を,抗 JC ウイルス抗体陽性,免疫抑制薬の使用歴,ナタリズマブによる治療期間が長いことという 3 つの危険因子の有無に基づいて行った.

方 法

市販後調査データ,臨床試験データ,多発性硬化症患者の独立したスウェーデン登録データを用いて,抗 JC ウイルス抗体検査結果(陽性か陰性か),免疫抑制薬の使用歴,治療期間(1~24 ヵ月 対 25~48 ヵ月)に基づき,ナタリズマブ治療を受けた多発性硬化症患者の PML 発症率を推定した.抗 JC ウイルス抗体検査のための血液検体は,多発性硬化症患者 5,896 例と,ナタリズマブ治療を受け,のちに PML を発症した多発性硬化症患者 54 例から得られた.

結 果

2012 年 2 月 29 日の時点では,ナタリズマブ治療を受けた患者 99,571 例のうち,PML の確定症例は 212 例であった(患者 1,000 例あたり 2.1 症例).診断前に検体が得られていた 54 例は,全例が抗 JC ウイルス抗体陽性であった.3 つの危険因子に基づいて PML リスクを層別化すると,PML リスクは抗 JC ウイルス抗体陰性の患者でもっとも低く,発症率は患者 1,000 例あたり 0.09 症例以下と推定された(95%信頼区間 [CI] 0~0.48).抗 JC ウイルス抗体陽性であり,ナタリズマブ療法開始前に免疫抑制薬の投与を受け,かつナタリズマブによる治療を 25~48 ヵ月間受けていた患者は,推定リスクがもっとも高かった(発症率は患者 1,000 例あたり 11.1 症例 [95%CI 8.3~14.5]).

結 論

抗 JC ウイルス抗体陽性,免疫抑制薬の使用歴,ナタリズマブによる治療期間が長いことは,それぞれ単独,または組合せで,ナタリズマブによる治療を受けた多発性硬化症患者の PML リスクレベルに関連していた.(Biogen Idec 社,Elan Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 1870 - 80. )